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出立
笹木には甘すぎる、と散々言われた。
桜太郎が討たないならば自分が討つ、と言って聞かない笹木をなんとか諫めて、吾郷の家を後にした。
「なぜ私が諫められているのですか」と笹木は言った。それはそうだ、と思い桜太郎は苦笑した。
重ねて礼を言い、宿の前で笹木とは別れた。
二階にある、自分の部屋までなんとか身体を持ち上げる。大したことはしていないし、先刻からそれほど経っていないのだが、なんだか疲れていた。
まだ空には日が残っている。寝るには早いが宿の者に言って布団を出してもらい、転がった。
父のこと、
仇のこと、
自分のこと。
それらのことを思い浮かべ、ぐるぐると考えを巡らせていたらそのうち寝てしまった。
翌日、目が覚めた桜太郎は、宿を引き払う為の準備をしていた。
すると、宿の者が桜太郎を呼びにやってきた。客が訪ねてきたということらしい。
笹木だろうか、と思いながら階下に下りると、そこにいたのは禄助だった。
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