第二怪異 キラキラ男子

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 時間になると勉強会の講師が現れた。といっても、その講師は最初からいた。最後列に座るひとりが前方の演台に移動したのだ。 「皆さん、おはようございます!」 「おはようございます!」 後方から元気よく挨拶が返ってくる。前方からは蚊の鳴くような挨拶がボソボソと聞こえた。講師は続けた。 「皆さん元気ですか? 暑くて参っちゃいますね!」 後方からドッと笑いが起きた。「えっ? 今、笑うところだったの?」と驚愕した。  その講師は、何でもない世間話をダラダラと十分ほど垂れ流し、意味不明なタイミングで何度も後方から笑いが巻き起こった。男達の腹から沸き起こる野太い笑い声だ。それなりに迫力があった。  そしていよいよ本題だ。所謂「儲かるビジネス」についてのプレゼンが始まった。最後の十兆円市場とは、どうやら化粧品業界の事を言っていたようだ。見当違いの爆笑を除いては、話の流れは自然だった。  化粧品業界の変遷から現在の市況感、今後の展望。そこまでは良かった。問題はそこからだ。特定のメーカーをとにかく押しまくるのだ。聞いたことのないメーカーだった。  そもそも、化粧品業界には詳しくなかった為、自分が無知なだけだとも思った。ところが、商品の話になった途端に話が抽象的になった。そこまでは客観的なデータに基づいて定量的に分析した、説得力のある内容だったのに……。理解力不足かもしれないが、商品の良さはさっぱり分からなかった。
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