第一怪異 落ち武者メタボ

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 ご丁寧に店の予約をしてくれていた。チェーンの居酒屋だ。店の前で待ち合わせをしていたが、見知らぬ人に声を掛けられて困った、と思ったら、例の友人だった。  目鼻立ちは変わらない。二年も経っていないので、当然だ。しかし、頭頂部は地肌を覗かせ、下っ腹はスーツの上からでもメタボと断定できる程に、ポッコリと出っ張っていた。頭頂部の件は、元々繊細な髪質だったのにブリーチなどかけるからだと思ったが、下っ腹は謎だ。食は細いはずなのに……。  まだ二十代前半だ。それにも関わらず、彼の風貌はまるで落ち武者の如く変貌を遂げていたのだった。何かと気苦労が多いのだろうか。もはやイケメンではない、完全に落ち武者メタボだった。 「あーごめん気が付かなかったよ! 変わったね。何というか……。その……。大人っぽくなったんじゃない?」 失敗した。曇る落ち武者メタボの表情を直視する前に 「やっぱりスーツ着てると分からないもんだね」 と加えた。我ながらファインプレーだったと、胸中でガッツポーズをした。彼のほころぶ笑顔に安心し、入店した。 「今日は奢りだからさ、遠慮無く飲んじゃって!」 個室に通されるなり、開口一番に彼は言った。 「いやいや、いいって、割り勘で!」 「こっちから誘ったんだし、出させてよ。それに、大事な話もあるし……」 大事な話とは何か。電話での会話から「何となく」誘われたと理解していた。若干身構えた。
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