第一怪異 落ち武者メタボ

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 それから少しの間、ビールを飲みながら他愛もない世間話をした。残念だが、話題がない。そう、それほど親しくもない友人とのサシ飲みだ。一通りの世間話が終わったら、気まずくなるに決まっている。  話題がないとムダに酒が進む。手元の割箸袋をこねくり回しながら、さっさと本題に入ってほしいと願う自分がいた。 「ところで、大事な話って何?」 たまらず聞いた。すると彼は真っ直ぐとこちらを見つめて言った。 「君ってさ、今、幸せ?」 驚いた。不躾に何てことを聞くのか。質問の意図が分からない。まるで、自分が幸せではないように見えるかのような質問だ。  一瞬で気まずさが苛立ちに変わった。一瞬顔にもそれが現れたのだろう。落ち武者メタボは繊細なタイプだ。こちらの感情の変化を察したように口を開いた。 「いや、悪気はないんだよ。ゴメンゴメン。単純に、今、幸せなのかな? と思ってさ……」 単純に思ったとはどういう事か。苛立ちは上書きされた。二度目の不躾な質問に対して、こちらはぶっきら棒に答えた。 「別に、幸せだけど?」 その台詞の後に「そんなに幸薄そうに見えるかバカヤロウ」と加えてやりたくなったのをグッとこらえた。 「そうなんだ……」 なぜか彼は不満げだった。何か言いたげだったが、それを飲み込んだ様子だった。ここまでくると気になってしまう。 「えっ何? どうした?」 「いや、実は、この人の講話を一緒に聞いて欲しいんだよ」 そう言うと、彼は鞄の中から何やらパンフレットを取り出した。
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