第一怪異 落ち武者メタボ

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 それは聞いたことのない宗教法人の教祖様による講話の案内だった。「信じぬ者は地獄に落ちる」といった事や「お布施で難病が治った」などと、好き放題に書かれていた。そう、彼は宗教勧誘の為に付き合いの浅い友人を飲みに誘ったのだ。もうすっかり騙された気分だった。 「悪いんだけど、こういうのは興味ないんだ。ごめんね」 丁重に断ってみたが、むこうも食い下がる。 「いや、とりあえず話だけでも聞いてみてよ。素晴らしい話だよ。人生変わるんだよ」 「忙しいし、ごめん!」 「絶対為になるよ。仕事もできるようになるし、彼女だってきっとできるし、辛い人生うまくいくようになるから」 「いや、その辺は困ってないし、辛くもないかな……」 「辛いんでしょ? 幸せになりたくないの?」 「いやいや、だから辛くもないし、別に幸せだってば」 「本当に? あんまりそうは見えないけど」 いよいよ限界だった。 「だから幸せだって言ってんだろうが! このボケナスが!」 勝手に人の不幸を決めつける落ち武者メタボの言葉にキレてしまった。頭に血が上り、最大圧力で血管が脈動した。  恐らく勧誘ノルマがあり、盲目的に誘い文句を垂れたのだろう。そのしつこい誘いが、自身の心の奥底で燻っていた「騙されて誘われたモヤモヤ」に共鳴し、過剰反応させたのだ。ボケナスなんて言葉を使ったのは久しぶりだった。
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