第二怪異 キラキラ男子

1/7
前へ
/16ページ
次へ

第二怪異 キラキラ男子

 社会人二年目の夏である。SNS経由である男と知り合った。自分が落ちた大学、第一希望だった大学出身の男だった。普段はWEBでの出会いには慎重なのだが、出身大学で少し気を許してしまったのだ。  気さくでスマートで誰とでも打ち解けられるキラキラした男性だ。一度飲みに行って意気投合した。女性関係に少し疲れてきた頃だった。爽やかな男の友情が心地よく、毎週のように飲みに行っていた。ある日、三件目のバーでそのキラキラ男子が聞いた。 「もし十億円あったらどうする?」 究極の質問だ。大金は人生を狂わせる。きっと急に親戚付き合いが濃密になるんだろう。例えば、甥っ子のいとこの母親の兄弟の父親の義理の息子を名乗る人間が急に現れて、祖父が病気だからとか何とか、そんな感じの訳の分からない前置きから「金貸して」と相談されたりするんだろう。そんな相談に乗っていたらキリがない。人間関係が破綻していくだろう。  自分の為に使うのが正解だろう。宝くじだったら当たったのを黙っていれば良い。そうでなければどうするか。不動産投資か投資信託か……。その手の知識には疎かった。熟考の末、答えを出した。 「会社、作るかな!」 酔っ払いの出した答えだ。それこそ会社設立など何の知識もなく現実離れしている。そもそも、どのような事業を立ち上げるというのか。 「いいね! さすが、俺が見込んだ男だ!」 彼の中では、その答えは正解だったらしい。そして次の質問を投げかけてきた。 「最後の十兆円市場って知ってる?」
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加