第二怪異 キラキラ男子

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 日曜日になり、目的地の最寄り駅でスマホの地図を開いた。真夏の炎天下、オフィス街のアスファルトから放たれる強烈な照り返しは、濃紺のスーツに絶望的な高効率で吸収されてゆく。こんな暑い日にスーツにネクタイ着用を要求するとは、やはり異質な集まりだと感じた。  勉強会の会場は薄汚い雑居ビルの四階だった。閉まりそうなエレベーターに駆け込むと、四階のボタンは既に押されていた。  覇気のない男性が二人居合わせた。ヨレヨレの黒いスーツに、白くて少し黄ばんだワイシャツ、伏し目がちで、目の下にはうっすらとクマができている。弱肉強食の自然界なら、確実に食われる側だ。人間界では、搾取される側だろう。  食うか、食われるか、彼等から自分はどちら側に見えているのだろうか……。これから何が起きるのか、若干の恐怖と、怖い物見たさの好奇心が芽生えていた。  会場は古びた貸し会議室だった。前方にはプロジェクターと大きなスクリーンが対面している。席数は二十席ほどだった。  後方の席半分はほぼ満席だった。そこに座る人たちは皆、こなれた業界人のような格好だ。グレーのスーツにパステルカラーのワイシャツ、ビビッドなカラーのネクタイは輝くタイピンで固定されていた。弱肉強食の自然界なら食う側、人間界なら搾取する側だろう。  講義なら後ろの席が良かった。眠くなった時に目立たないで済むからだ。案内係に前列に着席するように促されてしまった。仕方がなく、先ほどの搾取される人たちと一緒に前方の席に座った。少し遅れてキラキラ男子が現れ、後方の席に座った。搾取する側の格好をしていた。
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