第一怪異 落ち武者メタボ

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第一怪異 落ち武者メタボ

 新卒で東京の会社に入社し、社会の荒波に揉まれて春夏秋冬……。一通りの季節を経験して二週目に突入した頃だ。久しぶりに大学の友人から電話がかかってきた。 「久しぶりだね! 元気にしてる?」 突然だった。メールでもチャットでもなく、突然の電話だ。それも、友人といっても「友人」と「知人」の狭間でギリギリ友人に振り分けられるような相手だった。帰路につく為に乗りかけた地下鉄の電車から降りた。 「元気だよ! 久しぶり。どうしたの?」 「いやー何となくね。何してるのかな、と思って電話した」 何となくで一年会っていない相手に突然電話するだろうか。そんな疑問が頭に浮かんだタイミングで彼は付け加えた。 「来週の木曜日、酒でも飲まない?」 学生時代の彼を思い出していた。強めにブリーチが入ったサラサラヘアが印象的な、やや細身の塩顔イケメンだった。その見た目に反して気弱で大人しく、自分から飲みに誘ってくるようなタイプではなかったので、若干戸惑った。しかし、嫌いな相手ではなかった。 「いいね! 行こうか!」 誘いに応じた。
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