3話:「親友は卒業するんだから!」

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3話:「親友は卒業するんだから!」

 山の麓についた。  様々な建物や奥に見える広々空間にスポーツができるスペースが見えたりする。  既に自然観察やアクティビティをしている人々の騒ぎ声が聞こえてくる。    アツタカはまるで判決を待つ被告のように深刻な表情をしていたが、ウタに手を引かれると思うがままに歩かされる。  麓には門があって側に受付がある。  空間に表示されたディスプレイに、予約していた名前を入力する。 「今日の夜に少し先のバス停に乗って帰るから。そこからさらに電車になるけど深夜には帰れるよ」 「ありがと。予約もすべて任せてしまってごめん」 「いいよ、いいよ。私が誘ったわけだし」 (ここでアピールするって下心で来ているし、本当は全額奢るべきだよね。うう、罪悪感が)  門を抜けてパンフレットをもらう。  アクティビティやレストラン、その他の施設のことが書いてある。 「アツタカ、どこ行きたい?」 「俺は風を感じたいかな。せっかくだから。四輪バギーの射撃ゲーム。これは自動運転か」 「ふむふむ。セグウェイなら自在に動けるけど」 「洞窟探検もある」 「湧水を飲むとか水晶を見るとかできるみたい。写真も綺麗。これ自然光だけだって」 「想像以上に楽しそう」  アツタカの口角が上がる。  ウタはアツタカが楽しめるか不安でこわばっていた。  だが杞憂だったようだ。  それに。 (洞窟は絶対いい雰囲気になるし、アピールし放題じゃない? でもバギーは楽しいだろうけど)  親友というポジションを捨てて恋愛に移行するためには、わくわくよりもドキドキが必要なはずだ。  そのためにはかわいいって思わせること。  お淑やかで所作が美しい、それを目指すべきだ。  そう思っていたのだが――。 「アツタカ、まだまだじゃない?」  自動で凸凹の道を走るバギー。  振動で揺れるのも良し、風を感じるのも良し。  ウタは前髪で視界が塞がるのを苛つきながら空間上に表示される狼型のモンスターをゲーム上で撃つ。  スコアが上昇していく。  当たる部分によって与えられるダメージが違う。  倒すごとにスコアがもらえる。  攻撃を受けると一時的に撃てなくなるため、大幅なロスとなる。 「くそ、ウタのやつ上手い」 「はは、負けたらジュース奢りね」 「ここから逆転できるのか? ボスっぽいやつ来た!」 「それはこちらも同じこと」  ウタは汗をかいて髪を乱す。  シャツに汗が見えて僅かであるが透けてしまっている。  バギーから降りる。  疲れていたこともあり躓いて倒れそうになるが。 「大丈夫か?」 「も、もちろんよ」  アツタカの胸に手を置いて耐えた。  ウタは顔が赤くなってしまう。  アツタカの心臓は鼓動が早くなっていると嬉しくなったが。  これだけ騒げばそれはそうだと気づいて悲しくなった。  楽しかったのだから大丈夫、そう思うことにした。  
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