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5話:「これはこれで楽しいのだけど?」
洞窟を一通り見た。
続いて洞窟の外にある水飲み場へ。
湧水が飲めるらしい。
よく冷えていて美味しいことで有名だ。
「ぷはっ! 生き返る」
「そうね。ところでびしょ濡れよ」
「暑いからすぐ乾くって」
蛇口から流れる水を、手を合わせて溜めていたものの、指の隙間から零れてしまった。
水の勢いも激しく水量も多い。
ウタは髪を耳に掛けて水を飲む。
うなじを見せながらちらりとアツタカを見るが。
(見なさいよ!)
アツタカはシャツをパタパタと扇いで乾かすのに必死だ。
ウタは眉に力が入る。
しかし。
「本当美味いよな」
笑顔で言われてしまえば、ウタの心臓が危ない。
数秒前の怒りなど忘れてしまった。
「ウタ、耳を澄まして」
「ん? どうかしたの?」
小鳥のさえずる音。
木々を探すが見つけられない。
「都会はもう小鳥がいないよな」
「かわいい。姿が見えたら良かったのに」
「よし、建物の中で涼もう」
「いいけど、ノリノリだね」
「きっと喜ぶよ」
温泉がある建物へ。
道中、案内の看板が掛かれていたが黒くなっていて読めなかった。
今の時代簡単に地図が調べられるのは便利である。
ちなみに、アツタカの予想は外れて。
ウタは死んだ目でそれを見る。
アツタカはわくわくしながらウタにそれを紹介したのだが。
「剥製は違うわよ」
展示スペースでなければ叱っていたところである。
「違ったか。でもさ、ここの説明欄の、この山の若い木々の方が好まれているかも? みたいなこと書いてあるけど、都会から小鳥が消えた理由とかかな?」
「この山って新しいのかな?」
「開発のときに植えたとかか。樹齢何百年ってのはもちろん、若い木もパワーがありそうだな」
「うん」
「そういえば小鳥で思い出したけど。神様に捧げるやつ見て思ったけど電気とか火って人間特有だよね。人間とは? って聞かれたら火を使えるっていうかも」
「どうだろ? 火を使う生き物は他にいるかもしれないわ」
ウタは空間にディスプレイを表示して検索する。
「鳥でいるって。トビとかハヤブサが火を使う。『ファイアホーク』だってね」
「必殺技みたいで格好いいな。もう少し展示見たら水晶とか買えないか見てもいい?」
「私もお土産見たいかも」
二人は土産コーナーへ。
アツタカは水晶の値段に驚いて、何度も財布を見て肩を落とす。
ウタも覗く。
(アツタカのために買ってあげたいけど、それでも高い!)
「アツタカ、これすごいでしょ?」
「木を編んだバッグ?」
「うん。帰りに買おうかな?」
「意外と耐久性が高そうだし、カビとかも生えないし。燃えたりしなければ長く使えそうだし、何よりおしゃれだ」
「でしょ? 帰りに一緒に選んでね」
「いいけども?」
(やった)
ウタは内心喜んだ。
それから一度昼ごはんとして近くの他の山で取れたジビエ肉の料理を食べて。
温泉に入ることにした。
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