6話:「流れ星、よく撮れるよな」

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6話:「流れ星、よく撮れるよな」

 温泉は湧水という豪華さと、山の自然豊かな景色が最高だった。  それに老廃物のデトックス具合や発汗などによる消費カロリー、血行改善を数値で教えてくれるというハイテクなものもあった。  だが長くはいたくない。    アツタカは更衣室を出てフルーツ牛乳を飲む。  古来から温泉後の牛乳を飲むときは生きているうちでトップに入るような姿勢の良さで腰に手を当てて、ぷはっと息を吹き返し、何もかも上手くいくような気分になるのだ。 「温泉牛乳族がいると思ったらウタか。早いな」 「長く浸かるのはもったいないと思って。ねえ、涼まない?」 「涼んでいるが」 「星見る、みたいな」 「まだだぞ?」 「う、うう」 「けど星は見よう。それまで何する? 温泉入ったらあまり動きたくないし」 「そうね。スポーツとか、スペースが必要なゲームとかあるけど汗かくし。寝ようかな、暇になったわね」 「悪くないかもな。いろいろ忙しかった。忙しいというか落ち着かないというか。ウタがいてくれて良かった」 「黄色のカーディガン、値札取ってなくてごめんね」 「いいよ。あれ、新品だったな。洞窟のこと調べてくれて用意してくれた」 「お揃いでカップルだと思われていたわ」  ウタの唇が震えていた。  怖がって顔を青くして。 「暗くなるまでのんびりするか」  これ以上語り合うのが怖い。  何も話さなくても気まずくないのは、きっと親友の距離だ。    星が見えるようになる。 「ウタ、流れ星」 「動画にした」 「間に合ったのかよ。願い叶えたい放題だな」 「必死だったわ、叶えたいことがあったから。ごめん、私さ。チャンスだと思って誘ったの」  建物から離れた場所で、二人きりで星を見る。  空気が澄んでいると星は綺麗らしい。 「チャンス?」 「私に振り向いてもらうチャンス。私、ずっとアツタカが好きでした」 「好きってあの?」 「恋人になりたい方のやつ」  ウタは顔を赤くする。 「言わせないでよ、馬鹿」 「ごめん」 「謝るなんて最悪よ。ロマンティックだと思ったのに、大失敗。あーあ、今度仕切り直して告白するから、覚悟しろ鈍感幼馴染め」  ウタの笑顔にやられて、アツタカは俯いた。 「すごい失礼なこと言っていいか?」 「もう失礼だけど」 「トイレ行きたい。逃げるわけじゃなくて本当だから」 「信じてる、知っているから意外と真面目だって」 「意外とかよ」 「嫌なら精進することね!」  アツタカは頭を整理しながら建物まで歩いた。  それが良くなかったらしい。
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