AとBの生涯 前編

1/1
前へ
/1ページ
次へ
ある村に性格が悪いがとても美しいAと性格はとても良いが醜い容姿のBがいた。Aはその美貌で村の若い男性や女性を魅了し、Bはその優しさや思いやりで村の子供たちやお年寄りに慕われていた。それほどAの見た目は美しくBの心は綺麗であった。しかしAはこの結果にひどく不満を持っていてなんであんな醜いBが私と同じぐらい人気があるのかと内心腹を立てどうにかしてBのことを苦しめて周囲に嫌われるようにしてやりたいと考えるようになっていた。そんなある夜 いつものようにAが自分の取り巻きの若い男女と酒を飲んで騒いでいると「そういえばBとC男って付き合ってんのかな?」と何気なく若者の1人が呟くと「あっ!分かる。なんかあの2人いつも仲良さげに話してるもんね」「そうそう。それに超お似合いじゃない(笑)」「たしかに~!」「Bは絶対C男のこと好きだと思う」「間違いないよね」などと皆が同調して盛り上がり始めた。その様子を見ながら自分のことしか興味のないAはフフ良いこと聞いたわと密かにほくそ笑み、翌日からAはC男にちょっかいをかけ馴れ馴れしい態度でC男を誘惑し始めた。目をひくような美しさのAにそんなふうに誘われ好きにならない男などこの世にいるわけもなく純情なC男はすっかりAに夢中になりやがて2人は付き合うようになってしまった。それからというものAはわざとBの前でC男といちゃつきBを困らせるようになったがそれでもBは2人のことを心から祝福し喜び2人の幸せを願っていた。なにせBの心は透き通るように美しかったから。しかしAはBのそんな態度が負け惜しみにしか見えず内心愉快でたまらなくAを見るたびに口元が綻び思わず笑いそうになっていた。それからしばらくしてAは存分にBを苦しめたと思い満足したのかC男に対して全く興味がなくなり逆にC男の存在が鬱陶しくて仕方なくなり、ただ優しいだけで何の取り柄もないこんなブサイクにもう用はないと早く別れようと思っていたが一方的に私が振れば村での私の評判が落ちてしまうことを懸念しAは安易にC男を振ることはできなかった。なのでAは一計を案じ自分の取り巻きだった若者たちを自分の家に招きみんなの前で落ち込んでいるふりをした。するとAの思惑通りみんな心配して「どうしたんですか?」と心配して聞いてきたのでしめしめと思いながらAは重い口を開くような素振りを見せ、実はC男に暴力を振るわれ性行為を強要されてるとウソの告白をし始めた。それを聞いた若者たちは「ええっ!?」と驚きのあまり声をあげあのC男がそんなことするなんて信じられないと一瞬戸惑いを見せたが、かねてからAのような美人がC男と付き合ってることに疑問を感じていた単細胞の若者たちは徐々にAの口車に乗せられ始めすっかりその話を信じこむようになりC男に対して怒りが沸き始めた。そしてAはあろうことか私がC男と付き合ったのも無理やりC男に襲われ脅されていたから仕方なかったのとウソの告白をした。すると若者たちはキレながら「マジかよ あいつ許せねぇ!」「私もあの男にエロい目で見られたことある」「C男ならやりかねねぇ!」「C男がAさんと付き合うなんておかしいと思ったんだよな・・」と話に乗っかり「Aさんあいつと別れたほうがいいですよ。もし怖くてできないなら俺らに任せてください無理やりにでも別れさせます」と馬鹿丸出しの表情をして慰めてきた。Aはそれを聞き内心(なんて知能の低い連中なんだろう)と小ばかにしながらも「わぁ〜ん!!」と渾身の噓泣きをし「みんなありがとう。本当にありがとう!」と感謝を述べ涙を拭う振りをした。そして一息つくと「じつは今日これからCさんがうちにくることになっての。。でも私、怖くて・・」と震える素振りを見せた。その様子を見た取り巻きの1人が「じゃあ今日 別れ話したほうがいいですよ。大丈夫僕らもいますし」と頼もしい返事をしてくれその場にいる誰一人Aのことを疑わずみんな味方になってくれた。すべてはAの思い描いていた展開になった。AはウキウキしながらC男が家に来るのを今か今かと待っていた。一方その頃 C男はAに御馳走を食べさせてやりたい一心で隣の山まで狩りにでかけ、必死になって獲物を沢山捕まえてAの家に急いでいた。もう外は暗くなり西日が沈み始めていたが心優しいC男はこれ以上遅くなってはBさんに失礼にあたると心配になり猛ダッシュしてAの家に着くと「はぁっはぁっ」と息を整え「ドンドン」と家のドアを叩いた。Aは(やっとあのブサイクきたわ!!)と内心ニヤニヤしながらもか弱い女性のふりをして恐る恐るドアを開けた。するとC男が満面の笑みで「Aさんこんばんわ。ごめんね遅くなって。狩りしてたんだ ほらっ!」とニコニコしながら捕まえた獲物を嬉しそうに見せて笑った。しかしAはその獲物に対してなんの反応も示さずに無言でC男を一瞥すると突然「C男さんもう私たち終わりにしましょう・・」と別れを告げた。いきなりそう言われたC男は動揺し「えっ?どうしたの?」と泣きそうな顔でAに詰め寄った。するとAは突然「キャー!!」と叫び声をあげ室内にドタドタと駆け足で戻っていきAの悲鳴を聞いて若者たちが急いでC男の前に来ると鬼の形相でC男を睨みつけた。C男は突然大勢の人が現れたことにびっくりし「えっ?なに?えっ?」と尋ねるやいなや若者の一人に右肩をドンっと強く押され「おまえ、もういい加減にしろよ!Aさんにまとわりつくの。」と怒鳴られると「そうだよ!この変態ヤローが!」などと代わるがわる若者たちに罵声を浴びせられた。わけがわからなかった。しかし優しいが小心者で他人と喧嘩の一つもしたことがないC男は言い返すこともできずただただショックを受けながら黙って下を向いて耐えていた。そしてすがるようにAのほうを見るとAは責められてる自分をみてニヤニヤバカにしたような顔で嘲笑っていた。その瞬間(なるほど・・そういうことか)とC男は全てを悟ってAの部屋から逃げるように出て行った。「二度とAさんに近づくなよ!クソヤロー!!」という罵声を背中越しに浴びて。帰り際C男は悔しいやら悲しいやらで涙が止まらずさっき見たAさんの心底 自分を馬鹿にしたような笑顔が脳裏に蘇って悔しくてうまく呼吸ができなくなり苦しくなった。C男は「エグッ、エギュッ、エッ エッ エギュッ・・」と声にならない声を上げギリギリの身体を引きずって自分の家へとかろうじて戻りドアを開けそのまま倒れ込むように家に入った。それからC男は家に閉じこもるようになり村では良からぬ噂が流れ始めた。C男がAを襲い脅して付き合っていたひどい男だという噂が。その噂を流したのはAとその取り巻きの連中だったがみんなその噂を信じて誤解し誰もC男の家に近づかないようになって行った。でもBだけは違った。BはC男の事を心から心配し何度も根気強くC男の家に見舞いに行きドア越しに声をかけ続け玄関の前に食料を置いていく日々を繰り返した。するとBの思いが通じたのか次第に玄関の前に置いといた食料が無くなっていることに気づきBは嬉しくなった。それからまた月日が経ちようやく家のドアがゆっくりと開かれるとC男がめんどくさそうな表情や素振りで姿を見せた。その姿はやつれ青白く虚ろな表情で髭がボウボウに生えており元のC男の姿とは別人に見えたがBはC男の安否確認ができてほっとしそれからは毎日のようにC男の家に見舞いに行くようになった。そのおかげかC男はBの優しさに触れて徐々に癒され回復していった。BもC男と過ごす日々に幸せを感じ2人は束の間の休息のような穏やかな時間を過ごしていきやがて2人は自然の流れで付き合うようになっていった。しかしそんな状況をAが放っておくわけがなくたちまちBはC男と同様 悪い噂を流され皆に疎まれ嫌われるようになっていきそれに比べAの力は村の中で大きくなっていき今では取り巻きの若者たちじゃなくその影響力はお年寄りや子供たちにも及んでいった。するとAは村の女王かのような振る舞いをして村を支配するようになっていき、ある日邪魔者であるBとC男をこの村から追放することを考え自分の取り巻きにその旨を指示した。そんなことも知らずBがいつものようにC男の家へ行くとC男の家の前に数人の若者たちがいた。彼らのことはよく知っていた。Aのことを慕う若者たちでたびたびその素行の悪さが問題になっている人たちだった。Bはなんだかとても嫌な予感がして恐る恐る近づいていくとこちらに気づいたその若者たちがニヤニヤしながら下を指さした。なんだろうと思いその方を見てみたらCさんがうめき声をあげながら倒れていた。「えっ?」Bは驚きのあまり言葉を失い動揺してると若者たちが「ドッ」と笑い声をあげた・・「大丈夫?Cさん大丈夫?」泣きそうな顔でBはC男を介抱しようとするとまたしてもその様子を見ていた若者たちが「お~熱いですな~」「やめてくれよ俺らの前でおっぱじめるのはw」などと冷やかしながら2人の様子を嘲笑っていた。彼らの嘲笑を受けながらもBはC男を必死になって手当てしていた。そんな様子が気にくわなかった若者の1人が「おまえらうざいんだよ」と一言呟くと、「よっ!」と言って持ってきていた火のついた松明をC男の家に投げ入れた。「えっ?」Bがそう呟いた瞬間「ボオオオオオオ!!」と音を立て勢いよくC男の家が燃え始めた。(えっなにしてるの??)Bが困惑しているさなか若者たちはあろうことか燃え盛る炎を見ながら「ギャハハハハハ!」と爆笑しながら「燃えろ!燃えろ!もっと燃えろ!」と叫んで笑っている。「なにしてるの?なにしてるのよ!!」Bが泣き出しそうな顔をして怒りに震えながら叫び若者たちに立ち向かおうとしたBの左手をC男にギュッとつかまれ制止された。なんで?とBは思ったがC男の顔を見るとC男は傷ついた顔で首を横に振り「やめとけ」と伝えてきた。Bの事を心配してのことだったがBは内心悔しくて仕方なく泣きながらこの怒りをどこにぶつけていいか分からずにいた。こんなに人を憎んだのはは生まれて初めてだった。できればこの若者たちやAをCさんと同じような目に遭わせたいと怒りに打ち震えていた。そしてしばらくしてC男の家が全焼するのを見届けると若者たちは満足したのか帰って行った。残された2人は失意の中その場に取り残されていたが、しばらくして何かを決したように何処かへと動き出し消えていった。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加