オリジン

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「怪我人は!?」 「犯人は?」 「どんな車?」 …。 来るのが遅いよ。 マー君は担架に乗せられ病院に 運ばれた。 私も一緒に行ったが、待合室で 待ってろと言われたから今マー君が どうなってるかわからない。 ガチャ。 ドアが開いた音がして、前を見る。 60歳以上のお婆さん先生がいた。 きっと色々終わったのだろう。 診察も… マー君の人生も。 「もっと早く連れてこられなくて ごめんなさいね。」 そう他人事のように先生は告げた。 「いえ…。」 本当のなら許せないがそんな余裕も 元気もない。 「マー君は…?」 私はそれだけが知りたかった。 もしかしたら生きてるかもしれないと いう願いを込めて。 「マー君?あぁ、内野真空(うちのまそら)くんの事で合っているかい?」 「そうです。」 「すみません、助けられなかったわ…。」 「…そう…ですか。」 私にはもう泣く用の水が体内に 残っていない。 「最後に、マー君の顔見ていい ですか?」 「もちろんよ。」 「ありがとうございます。」 そうして真っ暗で、金属で作られた 頑丈な壁を開け通る。 「マー君…!」 「…。」 黙ってお婆さん先生は聞いていた。 涙は出なかった筈なのに、不思議な 事に涙が止まらなくなった。 「マー君…!ごめん…。 助けられなくてごめん。 私頑張ってみる。 マー君、見ててね。」 「真空さんを助けたいかい?」 …!? 「助けたいかい?自分の命に 代えても。」 急に先生が話し始めた。 このときの答えはもう決まっている。 「もちろんです。」 「分かった。出来ればこの方法は 教えたくなかったけど、あんたたちの愛に心が動かせられてしまってね。 誰にも教えたことがない方法。 私にしかない力を共有しよう。」 「力?」 「あぁ、ある一定回数だけ過去に 行くことができる。自分が行きたい 過去に。 ただ、過去で死んだら帰って これない。」 「それ、ください。 使いこなしてマー君を救って みせます。」 「でも、これには注意点があるの。 一定回数以上…過去と今を行き来した 場合、記憶喪失となって今に戻って くるか… 死ぬ…こととなる。 この一定回数とは人によって違う から頃合いを見て戻らないと いけない。 一定回数がなくなりそうだったら 一度しか警告が来ないからしっかり 戻ってきなね。」 そんな事を言われても、決意は 変わらない。 「行きます。 決意は揺ぎません。」 「そうかい。帰ってくる時は帰る意思を強く持てば帰れる。 逆に過去に向かう意思を持てば過去に行ける。 じゃあ手を出しな。力をあげよう。」 「はい。分かりました。 ありがとうございます。チャンスが あって嬉しいです。」 「じゃあ、また会えたらいいね。」 「はい。よろしくお願いします。」 そうしてハイタッチのように 手をお互いに当てた。
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