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幸せとは Ⅲ
「はぁ。こんな時まで性欲が。。」
と言いながら、太陽は遥の身体を拭いてくれた。
右手の傷が痛々しくてそっと触ると
「見ないで。俺、カッコ悪過ぎるだろ?お父さんはありがとうって言ってくれだけど、別に殴らなくても警察が来るまでアイツを抑え付けておくだけでよかった。そうすればこんなことにならなかったのに。」
「太陽、そんなふうに思わないで。」
「うん。」
「ところで、太陽って喧嘩強いの?」
「うーーん。。あまり言いたくなかったんだけど、中学の時、近所のボクシングジムに通ってたんだ。顔に傷ができるのが嫌で、3年間で辞めた。」
「太陽がボクシング!?嘘でしょ?その綺麗な顔で?」
「驚きすぎじゃない?」
「みんな驚くよ。明日由奈に言ってみて。絶対に驚くから!」
「分かったよ。そこまで言うなら聞いてみるよ。」
太陽は、遥の髪を乾かして顔にパックを付けてくれた。
「その顔、写真撮っていい?可愛すぎる!」
「やだよー。」
「けち。」
「だから、拗ねないの!」
「じゃあさ、その下着着てよ!」
と言って、さっき太陽が買ってくれた下着の袋を開けた。
「え!?なにこの下着!生地少なくない?」
「だーかーらー!おれの好みで買ったの。店員さんもすすめてくれたよ。」
「これ、どうやって着るの?」
「じゃあ俺が着せてあげる。」
と言って、器用にショーツの紐を結んでブラのホックも留めてくれた。
ブラジャーは、透けたレースがベースで、乳首とその周りしか隠れないデザインだった。
「うわ。着るとエロいね。俺我慢できるかな。。」
「自分で選んだんだから、我慢して下さい。」
「何だよ。その言い方。ってまた拗ねてるって言われる!」
と言って太陽は笑った。
遥は太陽の明るさに救われた。
暗闇に迷い込んだ時に、光で出口を照らしてくれる。遥にとって太陽はそんな存在だった。
お風呂を出てから荷物の整理をした。
太陽の部屋は広かった。
セミダブルのベッドとデスク、一人掛けのソファと小さいテーブルが置いてある。
荷物を置いても、まだまだスペースに余裕があった。
整理が終わると、
「一緒にベッドで寝ない?」
と太陽は言った。
ベッドの中で、
「明日、警察に行くんだよね?タクシーで行ってもらえる?お金のことは気にしなくていいから、これからも一人の時はタクシーを使って!さすがに明日は俺出社しないとまずいかなって思うから。ごめんね!」
と太陽は遥を抱きしめながら言った。
「うん。ありがとう。タクシーで行くことにする。」
太陽は安心したようで、直ぐに眠りについた。
遥は、今後のことを考えるとなかなか眠れなかった。
太一は転勤すると言っていたが、また現れるだろうか。自分と大切な人たちの人生をめちゃくちゃにしている太一が憎らしくてたまらなかった。
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