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開放 Ⅲ
「太陽、どうしよう。」
遥は直ぐに出られなかった。
「俺が出る。」
と言って、太陽は電話に出た。
名乗ってから、自分が太一を殴ったことを伝えて、謝罪していた。
直後、太陽の様子が変わった。
「え?容体は?はい。はい。わかりました。本人に意思を確認してからかけ直します。」
只事じゃない雰囲気を察して、太陽に何があったのかを聞いた。
「アイツ、自殺未遂したって。」
自殺未遂
太一が?
遥は足が痺れたような感覚に陥り、床に倒れ込んでしまった。
太陽は遥を抱き抱えて、リビングのソファの上に寝かせた。
由美が、
「何?遥さん!?どうしたの!?」
慌てて駆け寄ってきた。
「遥の前の旦那さん、自殺未遂したって。母親から遥に連絡があった。」
「え!?まさか!そんなことって。」
由美も動揺していた。
「遥、話していい?」
遥は震えて返事ができなかった。
「この状態じゃ無理よ。太陽の部屋で休ませてあげて。運べる?」
「分かった!」
そう言って、太陽は遥を抱き抱えたまま二階に連れて行ってくれた。
遥をベッドに座らせて、抱きしめた。
「遥、大丈夫だから。俺がいるから。」
太陽の温もりを感じていると、不思議と震えは落ち着いてきた。
どれくらい時間が経ったか分からなかったが、自然と気分が落ち着き、話せる状態になった。
由美は温めた麦茶を遥に持ってきてくれた。
「一緒に聞いてていい?」
「はい。」
由美は遥の手をさすって、横に座った。
「アイツ、昨日ビルから飛び降りたんだって。意識
不明で運ばれて、まだ意識が戻ってないって。で、転勤して一人暮らししてたらしいんだけど、その家から遺書が見つかって、遥に宛てたものだから、読んでもらいたいってことだった。」
「そんな。何で遺書なんて書くの。わたしはもう他人で、何の関係もないのに。迷惑だよ。今更、何で人の幸せを邪魔するの。太陽、わたしなんかといても幸せになれないよ。一生太一から離れられない運命みたい。ごめんね。もうこれ以上迷惑かけたくない。」
もう涙すら出なかった。
「遥。無理にとは言えないけど、決着着けに行かないか?俺も一緒に行く。夫婦になるんだろ?一緒に乗り越えよう。アイツに会いに行く必要はないから、遺書だけでも。どうかな?」
「太陽がそういうなら。行く。」
もうどうでもいい、太陽の言う通りにしようと思った。
太陽は直ぐに太一の母親に電話をかけた。
電話を終えて、
「今アイツの実家に父親と母親がいるから、来て欲しいって。車で行こう。大丈夫?」
「うん。」
二人で車に乗り込んだ。
由美は心配そうに見送ってくれた。
太陽は無言で運転し、遥も何も話さなかった。
太一の家に着くと、玄関で二人で待っていてくれた。
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