開放 Ⅲ

1/1
前へ
/114ページ
次へ

開放 Ⅲ

「太陽、どうしよう。」 遥は直ぐに出られなかった。 「俺が出る。」 と言って、太陽は電話に出た。 名乗ってから、自分が太一を殴ったことを伝えて、謝罪していた。 直後、太陽の様子が変わった。 「え?容体は?はい。はい。わかりました。本人に意思を確認してからかけ直します。」 只事じゃない雰囲気を察して、太陽に何があったのかを聞いた。 「アイツ、自殺未遂したって。」  太一が? 遥は足が痺れたような感覚に陥り、床に倒れ込んでしまった。 太陽は遥を抱き抱えて、リビングのソファの上に寝かせた。 由美が、 「何?遥さん!?どうしたの!?」  慌てて駆け寄ってきた。 「遥の前の旦那さん、自殺未遂したって。母親から遥に連絡があった。」 「え!?まさか!そんなことって。」 由美も動揺していた。 「遥、話していい?」 遥は震えて返事ができなかった。 「この状態じゃ無理よ。太陽の部屋で休ませてあげて。運べる?」 「分かった!」 そう言って、太陽は遥を抱き抱えたまま二階に連れて行ってくれた。 遥をベッドに座らせて、抱きしめた。 「遥、大丈夫だから。俺がいるから。」 太陽の温もりを感じていると、不思議と震えは落ち着いてきた。 どれくらい時間が経ったか分からなかったが、自然と気分が落ち着き、話せる状態になった。 由美は温めた麦茶を遥に持ってきてくれた。 「一緒に聞いてていい?」 「はい。」 由美は遥の手をさすって、横に座った。 「アイツ、昨日ビルから飛び降りたんだって。意識 不明で運ばれて、まだ意識が戻ってないって。で、転勤して一人暮らししてたらしいんだけど、その家から遺書が見つかって、遥に宛てたものだから、読んでもらいたいってことだった。」 「そんな。何で遺書なんて書くの。わたしはもう他人で、何の関係もないのに。迷惑だよ。今更、何で人の幸せを邪魔するの。太陽、わたしなんかといても幸せになれないよ。一生太一から離れられない運命みたい。ごめんね。もうこれ以上迷惑かけたくない。」 もう涙すら出なかった。 「遥。無理にとは言えないけど、決着着けに行かないか?俺も一緒に行く。夫婦になるんだろ?一緒に乗り越えよう。アイツに会いに行く必要はないから、遺書だけでも。どうかな?」 「太陽がそういうなら。行く。」 もうどうでもいい、太陽の言う通りにしようと思った。 太陽は直ぐに太一の母親に電話をかけた。 電話を終えて、 「今アイツの実家に父親と母親がいるから、来て欲しいって。車で行こう。大丈夫?」 「うん。」 二人で車に乗り込んだ。 由美は心配そうに見送ってくれた。 太陽は無言で運転し、遥も何も話さなかった。 太一の家に着くと、玄関で二人で待っていてくれた。
/114ページ

最初のコメントを投稿しよう!

202人が本棚に入れています
本棚に追加