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妊娠 I
初めてのSEXから、遥と太一の交際は順調に続いていた。
ただ、遥にとってのSEXは気持ちのいいものではなく、義務のようなものだと割り切っていた。
太一は初めての人。だから誰とも比べようがなかった。
社会人2年目になる年に遥は転職した。
体力的にホームセンターでの仕事は限界だった。
新しい職場は公共事業の会社で、事務職として採用された。
新しい職場で新しい仕事に慣れた頃、遥は妊娠した。
勿論太一の子供である。
太一は毎回避妊しなかった。
中で出さなければ大丈夫だから、と太一が言っていたのをずっと信じていた。
妊娠に気付いたきっかけは、生理が遅れ、身体が重怠くていつものように動けなくなったことだった。
まさか。
という気持ちはあったが、単なる仕事のストレスだろうという気持ちの方が強かった。
放置しておく訳にはいかないので、ドラッグストアで妊娠検査薬を購入して、そのままトイレで検査することにした。
結果が出るまで〇分と説明書に書いてあったが、そんなには時間がかからなかった。
直ぐに陽性と分かった。
遥は頭が真っ白になった。
どうしよう。
親には何て言う?
太一はどんな反応する?
わたし、産むの?
仕事はどうなるの?
様々な思いがどんどん湧いてきて、次は太一を責める気持ちが湧き上がった。
そもそも太一は派遣社員だし、遥は24歳、太一は26歳。
お互いまだ貯金もあまり無かったし、何より結婚なんてこれまで全く考えたことがなかった。
どうすればいいのか全然分からなかった。
ただどうしよう、どうしよう、それだけだった。
一度帰宅して、頭を整理してから太一にLINEした。
妊娠した。検査薬使ったから間違いない。
今夜話せる?
直ぐに返信がきた。
わかった。
夜会おう。
ファミレスで待ち合わせ、太一は時間通りにやってきた。
とても食事する気にはなれなかったが、適当な物をお互い注文した。
太一は申し訳なさそうに話し出した。
「ごめん。俺のせいだよね。正直びっくりしてる。遥も心の整理がついていないと思うけど、どうしたいのか教えて欲しい。」
「まさか妊娠するなんて思わなかった。親にもまだ話してないし、どうしていいか全然分からない。」
「そうだよね。その通りだと思う。お互いまだ結婚の話もしてなかったし、いきなり妊娠したっていう現実を突き付けられても答えなんて直ぐ出せないよな。でも、俺は責任は取る覚悟があるからそれだけは伝えておきたい。」
「そっか。責任は取ってくれるんだ。でも、太一君はいいよね。私がどの選択をしても、仕事に影響ないし痛い思いもしなくていい。わたしは既に体調が悪くて仕事も不安だし、産むにしろ産まないにしろどっちも大変なんだよ!責任取るって言うだけなら簡単だよ!
声を荒げた後、遥は泣いてしまった。
「今日はもう帰るね。」
と伝えて、何も食べずに店を出た。
翌日、会社には体調が悪いので休むと連絡をして、両親に妊娠したことを話すことにした。
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