遥の思い

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遥の思い

太一の気持ちを聞いて遥は驚いていた。 太一が以前に言っていたの意味とは、こういうことだったのか。 本当は喜ぶべきことなのしれない。 しかし。 遥は流産した時に、今まで太一と積み重ねた日々の全てが一緒にどこかへ流されてしまったような感覚に陥り、心は空っぽだった。 「太一、今日はお疲れ様。明日会えるかな?」 「こちらこそ今日はありがとう。明日二人で今後のこと話そう。」 LINEで会う約束をした。 正直まだあまり話をしたい気分ではなかったが、このままにしておくのがいいとも思えなかった。 遥は正直な気持ちを太一に伝えようと決めていた。 待ち合わせ場所は昨日3人で会ったファミレス。 2人で会うのはいつぶりだろうか。昨日会ったはずなのに緊張した。 「遥、今回は本当に心細い思いをさせてごめん。俺は何もできなかった。」 「うん。別に何か求めてた訳ではないし、そこはあまり気にしてないよ。」 「遥は強いな。こんな大変なことがあったのに、俺を責めたりしないしちゃんと前を向いてる。」 遥は違和感を覚えた。 太一にはそんな風に見えているのか!? やはり男と女は違うのだろうか。 以前に母親に言われた、「傷付くのは遥」という言葉が鮮明に蘇った。 「前を向いてる訳じゃない。短期間でいろんなことがあってすごくショックだった!正直いつ立ち直れるかわからない!でも太一に言っても仕方のないことだから言わないだけ!太一は責任のことしか頭になかったかもしれないけど、わたしは命と向き合ってた!」 段々語気が強まるのが自分でも分かった。 「少し距離を置こう!」 太一は呆気に取られていた。 「ご ごめん。そうだよな。でも。距離を置くとか言わないでくれ。俺、ほんとうに。。。」 そして涙を流してながらこう言った。 「俺は本当に遥のことが大切だから、離れるなんてできない。昨日お父さんに伝えた気持ちが全てで、遥と結婚したいと思ってるよ。だから全部がこれまで通りとはいかなくても、遥に寄り添って一緒に過ごしていきたい。」 太一が泣いている。 遥は何て言えばいいのかわからなかった。 距離を置こうというのは言い過ぎだったのかもしれない。 最初に伝えようと思っていた言葉を何とか絞り出した。 「言い過ぎたね。ごめん。でも少し時間が必要なのは本当だから、これまでよりは会えないかもしれないけど、たまにご飯食べにいこう。連絡はこれまで通りするし。」 「分かった。ありがとう。」 太一は納得した様子だったが、遥はもやもやしていた。 これまで太一には優しくしてもらったし、今だって別に嫌いになった訳ではない。 ただ、泣くのは反則だと思った。 泣きたいのはわたしの方なのに。。 でも、最初に太一に妊娠を報告した時に酷いことを言ってしまったこと、その時自分で泣いてしまったことを思い出すと、そこまで突き放すことはできなかった。 情があるから。 後から考えると、この時距離を置くのが正しかったのかもしれない。 少しずつ歯車が狂い始めていることに、遥はまだ気付いていなかった。
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