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卒業 就職 II
太一とは、社会人になって最初に配属された店舗で出会った。
遥は正社員、彼は派遣社員として働いていた。
遥より2才年上であったが、第一印象はどこか幼さを感じさせる部分があった。
短髪は茶色く染められていて、切れ長の目と面長の顔立ち、ヤンチャな雰囲気が学生のようにも見えた。
ホームセンターでの業務は細身の遥にとっては重労働だった。
接客はほとんど無く、主に品出しや補充、荷運び、発注や契約などの業務が多くを占めた。
バイトが急に休んだ時は更に大変だった。
客が購入したガスコンロを車まで運んだり、大物の品出しは体力的に本当にきつかった。
研修期間を経て、入社して2ヶ月程で既に退職することを考えていた。
そんな中、太一が遥の様子を察していつもフォローしてくれるようになった。
「俺が運んでやるよ!」
「休憩取れてないだろ?俺代わりにやっておくから!」
「おーい。大丈夫かぁ?」
事あるごとに気にかけてくれる太一。
優しくて素敵な人だと感じるようになった。
入社して初めての夏を迎えた頃。
新しいバイトの歓迎会の後に太一に告白された。
「俺、遥ちゃんのこと初めて会った時から好きなんだよね。清楚で近寄り難い雰囲気なのに、話すと明るくてはっちゃけてる感じに惹かれた。俺と付き合ってくれない?」
遥は何となく太一の気持ちに気付いていたが、派遣社員であったし見た目もタイプではなかった。
素敵な人ではあったが、恋愛対象としては見ていなかった。
でも、遥がここまで仕事を続けてこられたのは太一のフォローがあったからで、感謝はしていた。
「うん、ありがとう。返事は少し考えさせてくれるかな?」
「わかった。ゆっくり考えて。待ってるから。」
職場で毎日顔を合わせるので気まずさはあったが、1週間じっくり考えた。
付き合ったとして、上手くいかなくなった時に空気が悪くなるのが嫌だったし、周りにバレて仕事がやり難くなるのも嫌だったのだ。
一方で、このタイミングを逃したら暫く彼氏はできないような気がして、必然的に処女は卒業できないのではないかという思いもあった。
遥はちょうど1週間後の仕事終わりに太一に返事をすることに決めた。
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