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「……分かりました」
蚊の鳴くような声だった。
明香音に向けられた大蔵の目。
その背後には、すがるようなたくさんの顔がある。
断れる雰囲気ではなかった。
「明香音!」
「お姉ちゃん!」
蒼太郎と静花が猛反対しても、明香音の意志は揺るがなかった。
大蔵が村人達に顔を向ける。
「ご安心ください。これから魂呼びの儀式を行いますので、成功するまでどうか、みなさんご無事で」
「ありがとうございます、村長!」
「たまゆら様、ありがとう!」
「ありがたや、ありがたや」
大蔵は安心し切った顔を見渡したあと、明香音の肩にポンと手を乗せた。
「明香音、頼むな」
「……はい」
ずしりと重く感じられる父の手。
明香音は震える手で、右の手首を袖の上から握り締めた。
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