1人が本棚に入れています
本棚に追加
弐
「吐け。さっさと」
「……」
ゴンッと鈍い音。
剣の柄で殴られた礼は、どっと倒れる。
後ろ手に縛られているので、起き上がることもままならない。ガッと髪を掴み上げられ、痛みに顔を歪める。
「李勢の居場所、逃走経路。何かしら知っているだろう」
黙して語らず。役人は苛々と歯噛みして礼を見下ろす。
「このざまか。李家は揃って、忠臣の皮を被った自分勝手野郎だな」
「……陛下が私に死ねと命じるなら、受け入れましょう」
「この期に及んで。選べるとでも勘違いしてやがるのか。つくづく、厚かましい奴だ」
嘲笑して、役人が礼を踏みつける。
悲鳴をもらすこともなく、礼は痛みに耐えた。
(どのような扱いを受けようと。私は最期まで、皇帝陛下の忠臣でいなくてはならない)
だが。
(その勝手な想いに、弟を巻き込むつもりはない)
愛する者達は、多くが悲劇の渦中で命を落とすことになるだろう。
だからこそ。
(勢。お前は、自由の身だ)
逃れられたなら、せめて。
(私の分まで……)
最初のコメントを投稿しよう!