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「吐け。さっさと」 「……」  ゴンッと鈍い音。  剣の柄で殴られた礼は、どっと倒れる。  後ろ手に縛られているので、起き上がることもままならない。ガッと髪を掴み上げられ、痛みに顔を歪める。 「李勢の居場所、逃走経路。何かしら知っているだろう」  黙して語らず。役人は苛々と歯噛みして礼を見下ろす。 「このざまか。李家は揃って、忠臣の皮を被った自分勝手野郎だな」 「……陛下が私に死ねと命じるなら、受け入れましょう」 「この期に及んで。選べるとでも勘違いしてやがるのか。つくづく、厚かましい奴だ」  嘲笑して、役人が礼を踏みつける。  悲鳴をもらすこともなく、礼は痛みに耐えた。 (どのような扱いを受けようと。私は最期まで、皇帝陛下の忠臣でいなくてはならない)  だが。 (その勝手な想いに、弟を巻き込むつもりはない)  愛する者達は、多くが悲劇の渦中で命を落とすことになるだろう。  だからこそ。 (勢。お前は、自由の身だ)  逃れられたなら、せめて。 (私の分まで……)
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