国際郵便

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手紙は、書き出しこそ 「おばあちゃんこんにちは 私はマリアです」 で、書かれているが、それ以外は 外国語のようで、安枝にはちんぷんかんぷん 「ここはひとつまた、言都ちゃんに翻訳こんにゃくを頼むかね」 与謝野言都は、茶飲み友達の与謝野さんちの 長女で、以前にも外国人観光客が来店した折、 通訳(スマホに入ってるアプリとか言うやつ) してもらった事があるが、去年の秋に結婚し、 実家にはたまに顔を出すくらいだと聞いた 「言都ちゃん、今度いつ帰ってくるのかな、 さっき奥さんに聞いときゃ良かった」 安枝は、ブツブツ言いながら、表に出ると 植木の水やりを始めた その時、谷さん(彼は近所の不動産屋の社長で この辺りを夕方よく散歩している)が 通りかかって 「暑いね〜!打ち水かい?精が出るね」 「あら、社長さん、まだ夏はこれからなのに 暑いわね〜」 「異常気象かね、フランスのパリ辺りも猛暑だってよ、ニュースで言ってだけど」 「パリ…?そうだ…!谷さんなら顔が広いから、 ちょっとさ、イタリア語?訳せる人知らないかな?」 「イタリア語?」 「…実は孫…から手紙が来たんだけど、外国語らしくて、書いてある事がよくわからないのよ」 「孫⁉︎…って、もしかして、恭子ちゃんの娘かい? 日本に帰ってくるのかい?」 「…そうじゃないのよ」 安枝が、ざっと事情を話すと 社長は、少しの間考えていたが 「それなら、うちの事務員が出来るかもしれないな まだ店は営業してるから、いるはずだ 今からその手紙を持って来られるかい?」 「さすが社長!頼りになるわ〜」
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