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八雲ユニ 2回目
バスタオルを持つユニが瞬きをした。室内にいたはずなのに、とでも言いたそうに彼女が周りのライトアップされた和風の建物を見る。
「ぼーっとして、どうかしたの。ユニ」
プールサイドの白いデッキチェアに寝転ぶ真田アヤがユニに声をかけていた。赤いオフショルダービキニ姿の彼女の傍らには透明の浮き輪が置いてある。
風鈴型のスピーカーから不気味なメロディが聞こえてくるとユニが反応をした。
「時間が戻っている? それとも夢だったとか」
「なんか分からないけど、とりあえず座ったら。顔色が悪いよ……ユニ」
首を縦に振り、ユニは近くのデッキチェアに座る。
実際にあったのであろう、白髪の男との猥褻な行為を思い出しているのかユニが身体をびくつかせた。
「飲み物でも買ってこようか」
「んーん、平気平気。頭が痛くなっただけだから」
斜めがけしていた黒色の防水ポーチを外しつつユニが笑顔を作る。そんな彼女とは裏腹にアヤの表情が曇っていく。
「これからミッドミッドナイトでイケメンを引っかける予定だったけど帰ろうか」
「わたしだったら」
「わたしも風邪っぽいから帰りたいだけ。ほらほら……さっさと準備しよう」
長い茶髪を揺らして、ごほごほとアヤはわざとらしく咳きこんだ。
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