プレシャスプレイス

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 出てきたのは例のラフストーンシリーズの作品ばかりだった。説明を聞いたからか、より良く見えてきた。 「うん。やっぱり良いね。このシリーズは。売れ行きを見ずに作り続けるのだから、森本さんの感性も良いって思っていたんでしょう?」と加賀さんは言い、笑みを浮かべた。「他には無いのかって何度も聞かれたよ」 「ああああ、ありがとうございます」と森本さんは言った。視線は完全に泳いでいる。むしろ溺れている。 「この淡い緑のペンダントも可愛いですね」と私は言い、手に取ってよく見る。確かに個性と味がある。どの石をどの角度でどんなアクセサリーに仕立てるのか、考える事、決める事はたくさんありそうだ。その事を伝えると、森本さんは真っ赤になって黙ってしまった。 「あの。並べる前に買っちゃって良いですか?」と私は言い、最初に見たピアスと緑のペンダントを指差した。 「構いませんよ。どうぞ」と加賀さんが頷き、「あ。ありがとうございます」と森本さんは言い、再び、姿勢を正した。  その後、2人は値付けや、今後の商品展開について込み入った話を始めた。私はそっと席に戻り、再び、本を開いた。
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