プレシャスプレイス

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「こんにちは」と私は言い、お店の中を見回した。どこからかウインドチャイムの涼しげな音が響いた。  外側もそうだったが、内装も白で統一されていた。大きな窓のおかげだろう。店内は光に満ちていた。  白いテーブルクロスが敷かれたテーブルが3つ、4人ぐらいが座れるカウンター席があった。壁には葉書くらいの大きさの額縁が数点、飾らせており、淡い色合いの風景画が納められていた。流行に左右されない、洗練された空間に感じられた。 「こんにちは。いらっしゃいませ。あの、もしかして鈴木さんですか?」とカウンターの奥から落ち着いた声が聞こえてきた。 「あ。はい。鈴木です。本を取りに伺いました」 「今、お持ちしますね」と再び、カウンターから声と足音が聞こえてきた。  カウンターから現れたのは焦茶色のエプロンを着けた30代ぐらいの細身の男性だった。白い空間に唯一の色彩に見えた。  
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