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控え室の外から呼びかけられる。
聡志と正人だ。桜も来ている。
芽衣が、かろうじて母親の顔に戻る。部屋に入るなり、桜が目を輝かせて話す。
「おばちゃんキレイだった!
さくらも花嫁さんになりたい」
そんな無邪気な桜に、日向子は笑顔で答える。
「桜ちゃん。素敵な人を見つけてね。
桜ちゃんだけを大切にするパパみたいに、約束を破らない人を見つけてね」
不思議そうに首を傾げる桜は雄太を見つめる。しかし、父親が返事をしないので、母親の芽衣が怒りを爆発させた。
「桜!この人と喋っちゃダメ」
「何で?」
「何でもよ!!」
大声で叱りつける芽衣の顔が歪む。
聡志が「行こう」と声をかけ、日向子は一番に外に出された。振り返り皆の様子を見る。扉が閉まる直前に、正人が
「お父さん。明日の朝 迎えに来てね」
と言うと、ぎょっとした表情で雄太が正人を見た。
もちろん背中を向けている正人からは雄太は見えない。まっすぐに 聡志の元に駆け寄り手を繋ぐ。
「もちろん。入学式にも行くよ」
父親と初めて呼ばれて嬉しかったのか、聡志は正人の手をしっかりと繋いで部屋の外に出る。
扉は閉まり、隙間から泣き出す桜の声と争う芽依と雄太の声を聞くと、日向子は晴れ晴れとした顔で結婚式場を後にした。
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