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「海だ!すごく 広い」
「正君、貝がら拾いに行こうね」
正人と桜が楽しそうに会話する。
家族全員がホテルのロビーから見える海を眺めている。聡志とお義母さんが チェックインの手続きをしている。お義父さんは荷物番をして、子ども達のそばに雄太がいる。
日向子はぼんやりと集まった家族を眺めたが、ロビーを行き交う他の家族に比べて、どこかおままごとの家族ごっこのようだと感じた。
しかし虚しさを感じている暇はない。
芽衣が挑発してくる。
「あーいいホテル。でもあんたが邪魔で、くつろげない」
「桜ちゃん 車でずっと寝てたそうですね。深夜まで勉強させてるとか」
「そう。暇な正人君と違って桜は中学受験するから忙しいの」
「大変ですね。勉強できないって」
日向子の嫌味に、芽衣は過剰に反応した。
「違う!ゆう君と同じ中高一貫校に入るために努力してんの。有名校だから偏差値が高いし。
高卒のお義姉さんには分かんない世界です〜」
無視していると、恵子に
「みんなすぐに外に集合 !バーベキュー始めるわよ」
と呼ばれ、家族全員、外の広場に集まった。
屋外グランピングエリアでは白いテントが大きく張られ、横にトレーラーハウスが用意された立派な施設だった。エアコン完備でソファーやダブルベッドもあり、休憩スペースとしては最高だ。
絶景を眺めながら快適に過ごせる。
早速 食材を焼き、海の幸を味わう。バーベキューの火が燃え上がるのを面白がる正人は、料理を食べるのそっちのけで燃料の炭を入れたがり、網からはみ出しそうな大きな炎に歓声を上げる。
しばらくすると、恵子がトレーラーハウスの中でつくろぎ始め、桜と芽衣の親子も出たり入ったりと、それぞれが自由に過ごす。
やがて 義理母たちは部屋に帰り、芽衣と桜は大浴場に行くというので、正人も聡志を誘う。
「お父さん、僕たちもお風呂 行こう」
「よっしゃ そうするか」
楽しそうに接する聡志を見て、雄太は部屋の鍵を芽依から奪うようにひったくり部屋に戻って行った。日向子は
「少し片付けてから行くね」
と皆を送り出す。一人になると、バーベキュー用に用意された軍手をはめて、雄太と桜の使用した紙コップと割り箸を別々のビニール袋に入れて持ってきた トートバッグに丁寧にしまった。
以前、駐車場で芽衣と雄太の言い争いを聞いてから気になっていた。
DNA 鑑定に出して、桜と雄太が本物の親子かどうか確かめる絶好の機会だ。
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