二十日正月

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「悪人め!包丁?あんた 自分で 何言ってるか分かってんの!?」 「大丈夫。正人の骨折もそうでしたけど、子どもの怪我なんて偶然です。大人がそばにいても起きる時は起きる。ご存知では?」 「桜を人質に取るなんて……」 「まさか。今日は楽しいティーパーティーです。 お義母さんもいるんですよ。 前夜祭は甘いお菓子なら、後夜祭はスパイシーな肉料理といきましょうよ。ご希望なら共食いしますか?」 共食いの意味知ってる? お互いに食い合うことの他に、互いに利益を奪い合い、最後には共に損をするんですって。 私たちにお似合いでしょう? 「……もっと早くあんたを壊せばよかった」 「2月3日はごちそうしていただけますね?」 玄関から恵子の声が聞こえる。桜も一緒に帰ってきたようだ。電話は突然切れた。 受話器を置いた直後に、恵子がリビングに入ってきた。 「あら、ひなさん早かったのね」 「はい、道が()いていました。桜ちゃん、ほんの少し息抜きしよう」 「おばさん、こんにちは。今日はありがとう。 昔はよくお菓子作ったよね。うれしい」 桜は顔色も悪く以前より痩せた。かなりの寝不足もあるのだろう。想像以上に喜ぶ桜を日向子は優しく迎え入れた。 2月の節分には鬼が出る。 最後まで人でいられるのは、いったい誰だろう?
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