節分の鬼

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それでも恵子は諦めず、諭すように芽衣に話す。 「でも雄太君の実子でしょう。父親を奪って悪いと思ってるなら罪滅ぼしもできたのに。 ひなさんは結婚前から桜には優しかった。正人とも 分け隔てなく接してた。愛情は本物だった。 なかなかできないわ。子どもに罪はないって言っても浮気相手に似てきたら恨めしいし憎いわよ。 愛情取られたら、それはもう 突き飛ばしたくもなるわよね。芽衣? 何も言わないあなたは、私のことも信用してないじゃないの」 「お母さんに言えるわけない!いつもお兄ちゃんのこと大事にしてたくせに。 あたしは二の次。お店も任せてくれなかった。ずっと差別してきたくせに信用できるわけない!」 「都合が悪くなるといつも人のせいにする。あなたはお母さんの話を聞いてくれないから」 「お父さん!ねぇ聞いてよ。お父さんなら分かってくれるよね」 メイはお義父さんにすがりつくが一言も返事がない。恵子の話が続く。 「芽衣、あなたも2人のように本当のことを言ったら? 他にも隠してることがあったら今のうちに話して。 これが最後よ。謝れないの?」 「うるさいな。もうお母さんには頼まない。 先に私を見捨てたのはお母さんだから!我が子を捨てたんだから先に謝ってよ!母親失格のくせに」 「誰が、我が子だって?」 口調が変わった 恵子は般若のお面のようだ。 嫉妬と恨みで口がつり上がり激しい怒りを表すが、目には反面、眉毛を寄せた悲しみが見える。 女の二面性が現れた複雑な表情。 義理の母の仮面が()がれた。 恵子の顔が母から女の顔に変わる。 見たこともない別の人格が現れたようで、日向子は恐怖で動けない。 「芽衣さん。あなたは私の子じゃない。 そこのゴミ旦那が愛人との間に作った子ども」 衝撃の事実が明かされる。 義理父に視線が集まるが、静かに顔を背ける。 「私がね。この店で四苦八苦しながら、2階で聡志を必死で育ててる間、下の店舗で若い女の従業員と不倫してたの。 楽しかったわよね〜。若い女の体抱くのは。 それでできた子供。 間違いないわよね、あなた?」 お義父さんが下を向く。
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