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「遠慮しなくてもいい。もっとも、ミッションの出来栄え次第ということだけどねえ。はっはっはっは」  新蔵は瞬時に忖度した。「よろしくおねがいします」と頭を深々と下げた。 「おおそうだ、投票日前日までと言ったが、投票日の直前がいいな。当日でもいいが、より衝撃的で、確実な勝利がほしいからな。うん。よろしく」  たのみましたよ、と流山は片頬を緩ませ、君津とともに部屋を出ていった。  館山新蔵は、ひとり残された部屋で、頭を垂れたまま立ち尽くしていた。  ブラインドの隙間から差し込む光が、やけに眩しかった。  数日後、流山が佐貫との席を設けてくれた。  選挙を前にして、佐貫と流山が一緒にいるところを誰かに見られることは、なにかと誤解を招くということで、新蔵は流山抜きで佐貫と会った。 「館山さん、よろしくお願いします」  佐貫は慇懃に頭を下げた。  佐貫は一見貫禄があり、ちょっとやそっとのことでは動じない印象があった。しかし新蔵は、佐貫が自分に視線を合わせず話す姿を見て、こいつは小心者で、寄らば大樹、弱気をくじき強気に屈するよくあるタイプの人間なのだとすぐにわかった。  とはいえ、流山からの指示は絶対である。逆らうことは許されない。忸怩たる思いを抱きながら、新蔵は佐貫と対峙した。
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