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 「この度は力になってくれるそうで、頼りにしていますよ」  佐貫は目を泳がせながら言った。 「いやあ、わたしごときが何をお手伝いできるかわかりませんが、ひとつよろしくお願いします」 「まあそうつれないことを言わないでくださいよ。今度わたしが当選した暁には、館山さんを副知事に推したいと思っていますよ」 「え、ふ、副知事、ですか」 「そうです、流山先生のところで10年も務めていらっしゃるんだ、政治的能力は折り紙付きでしょう」 「い、いやあ」思わず笑みがこぼれた。リップサービスとわかってはいるが、悪い気はしなかった。 「謙遜しなくていいですよ。顔に自信がにじみ出ている」 「そ、そうですかねえ」 「頼みます。この佐貫、一生のお願いです。勝たせてください、お願いします」両手をついて頭を下げられた。その場限りの行動と見え透いている。しかし、流山の手前、断るわけにはいかない。 「まあ、できる限りのことはさせていただきます」と答えた。 (結果として選挙に勝てばいいのだ、候補者を下ろすなどという強硬手段を使わなくとも選挙に勝てばいいのだ、何とかやってみよう)  新蔵は、副知事という確証のない夢をみることで自分を納得させた。  しかし、対立候補の検見川陣営は活気に満ちており、勢いがあった。スタッフも若く、行動的だった。  旧態然の佐貫陣営は、引っ張っていく役の古株は「何かするときは俺の許可をとれ」と威張ってばかりで先に立とうとしていなかった。 (これでは勝てない)
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