4人が本棚に入れています
本棚に追加
「野木坂(消防署)にひとりいますけど、救急隊員なので、いつも疲れているんです。なので、相談するのがなんだか申し訳なくて。非番は休んでもらいたいし、それに、彼女、こんな相談はあんまり得意じゃないみたいだし」
「こんな事態なのよ、気を使っている場合じゃあないでしょうに」
朱里は叱られた子供のように身を固くした。「連絡してみます」
「うん、一度確認したほうがいいよ」
は、い、と朱里は力なく俯いた。
「それでね、わたしも力になってあげたいけど、やっぱり難しいと思うのよ」
純奈はきっぱり言った。
「え、どうしてですか」
顔を上げた朱里は、悲しそうな瞳になった。
純奈は声を潜め「忙しいとか面倒くさいとかではないのよ。たしかにわたしはアラフォーで、いろいろ経験はあります。後輩から相談を受けてもそれなりに応えることはできると思う。でもねえ、恋愛のことはねえ、なにせ経験がほとんどないのよ。まして妊娠したこともないし。憶測でアドバイスはできないの」と言った。
「それは」朱里もつられて小声になった。
「わたしがもっとそっちの方面に経験豊富だったらよかったんだけどねえ」
「でも、純奈先輩は、職員募集のポスターモデルになったほどきれいな方だし、いろいろ経験あると思ったんですよ」
「ああ」純奈は苦笑した。
最初のコメントを投稿しよう!