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「君がヤツについて、勝たせてやってほしいのだ」 「は?」 「この世界、いろいろあるのだよ」  人の気配に振り向くと、いつの間にか男がひとり、立っていた。 「何卒よろしくお願いします」男が頭を下げた。肩幅のある、きりりとした顔立ちの男だった。四十歳くらいだろうか。 「ああ、この男は佐貫知事の世話をしている者だ。秘書というよりは付き人、だな」 「君津(きみつ)です」よろしくお願いしますと名刺を差し出した。  新蔵も「館山です」と挨拶し、名刺を交換した。 「佐貫知事には選挙参謀がいらっしゃらないのですか」 「ああ、います。しかしどうにも、古いのです。人間も、考え方も」  流山は抑揚のない声で言った。 「人はともかく、考え方が、ですか」 「効率が悪いのです。実弾を打った方がはるかに効果があがるのに、まずは顔を売れとか知名度を上げる方法を考えろとか言うばかりでして」 「だって、実弾なんて、違反でしょ」 「そうです。ばれたらお縄と皆知っている。だから金を貰ったとしても当人は受け取ったことを言えないのです。言うのはもらえなかった者たちなのです」 「なるほど」 「地域によっては、今回はいくらもらえるのだと聞いてくる輩もいるくらいですからね」 「それを、つまり、実弾を、わたしに打てと」 「まあ、それもひとつの方法ですが」 「他にもあると」 「簡単なことだよ」流山が言った。 「なんでしょうか」
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