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「ふーん……」
そう言葉を返すダンハがナカヤマに好意を抱いているようには思えない。彼が王女の夫という地位を手に入れたいのならば、ここはメンジの挑発に乗っておくべきだ。歌舞伎町でどんな人間を見てきたメンジでも、ダンハがうそをついているようには見えかった。娘に過保護なディミトリの思い過ごしだろうと。
「私、あなたのものになったつもりはないのですが」
ナカヤマはワンテンポ遅れて怒る。メンジは声に出さずに笑っていた。
「そうだ、ここへ来るまでに、ひどくファッションセンスのない青年を見たよ。僕は画家だから気になる。ああいう人間は、出かける前に自分の恰好がおかしいと思わないのか、ふしぎでならない」
ダンハが物を言う。人前ではきれいで丁寧な言動を心がけるように見えていたが、こういうことを言う人間なのか、とメンジは思った。王女に好かれたいという思いを、彼からは少しも感じられない。
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