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「花織、どうか援助を……」
さらに言いつのる繁隆に、花織は、
「ごめんなさい。叔父様」
と謝った。
「政府からいただいた謝礼金は全て、被害に遭われた方々の援助に回すつもりです」
「えっ!」
涼世が驚きの声を上げる。
「そんな馬鹿なことに使うの?」
「お前はまた花織を馬鹿と言ったな」
飛羽が立ち上がった。片手を前に出す。手のひらの上で、風が渦を巻き始める。
世界の果てまで吹き飛ばされると思ったのか、涼世は「ヒッ!」と、蛙がひしゃげたような悲鳴を上げた。
「飛羽様」
花織が飛羽の袖を引っ張り、「駄目です」と止める。
飛羽が、渋々と言った体で風を霧散させる。
「そういうことですので、叔父様、叔母様、涼世さん。どうぞお帰りください」
花織は背筋をまっすぐに伸ばしたまま、にこりと笑った。
毅然とした花織に対し、もはや何も言えず、橘家の者たちは、すごすごと帰って行った。
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