国と聖女

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黒いマントを常に身につけ。 頭からフードをすっぽりと覆い、顔を隠していた。 何やらイーリスに少しの間、顔を晒していたようだが。すぐにまたフードを被っていたから、その素顔は見ていない。 いくら侯爵とは言えど無礼にも程がある。 跪いて挨拶することもしない、痴れ者。 あんな場面でも素性を晒さないのだから、卑屈な精神で容貌も酷く醜いのだろう。 実に底辺聖女にお似合いである。聖女を求めた理由も実に意味不明で『一目惚れをした。だから妻に迎え入れたい』『それが更新の条件だ』とか、そう言った訳のわからない理由だった。 きっと聖女の私の血を狙っていたのだろう。 だからそんな訳のわからないことを言ったに違いない。しかし、こちらには底辺聖女がいた。 ──だからその条件を飲んだ。 そう言ったこともあり。何か小賢しいことをして、書類を偽造したりすることは十分にあり得ると思った。 それに──ある事を思いつき。 くすりと口元から笑みがこぼれ、未だ機嫌の悪そうなフィリスに声をかける。 「フィリス。もしこちらに万が一の手違いがあったとして。リオとやらが何かを言って来ても、きっと大丈夫ですわ」 「……アメリア。それは本当かい?」 「えぇ。だってレヴァンティンは私達、グリアス国と言う庇護があるから他国から守られているもの。いくら私達と同じヒトのかたちをしているといえ、魔性には違いない。私達がいないと、あの領地は成り立たない」 そこから、滔々と語った。
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