832人が本棚に入れています
本棚に追加
黒いマントを常に身につけ。
頭からフードをすっぽりと覆い、顔を隠していた。
何やらイーリスに少しの間、顔を晒していたようだが。すぐにまたフードを被っていたから、その素顔は見ていない。
いくら侯爵とは言えど無礼にも程がある。
跪いて挨拶することもしない、痴れ者。
あんな場面でも素性を晒さないのだから、卑屈な精神で容貌も酷く醜いのだろう。
実に底辺聖女にお似合いである。聖女を求めた理由も実に意味不明で『一目惚れをした。だから妻に迎え入れたい』『それが更新の条件だ』とか、そう言った訳のわからない理由だった。
きっと聖女の私の血を狙っていたのだろう。
だからそんな訳のわからないことを言ったに違いない。しかし、こちらには底辺聖女がいた。
──だからその条件を飲んだ。
そう言ったこともあり。何か小賢しいことをして、書類を偽造したりすることは十分にあり得ると思った。
それに──ある事を思いつき。
くすりと口元から笑みがこぼれ、未だ機嫌の悪そうなフィリスに声をかける。
「フィリス。もしこちらに万が一の手違いがあったとして。リオとやらが何かを言って来ても、きっと大丈夫ですわ」
「……アメリア。それは本当かい?」
「えぇ。だってレヴァンティンは私達、グリアス国と言う庇護があるから他国から守られているもの。いくら私達と同じヒトのかたちをしているといえ、魔性には違いない。私達がいないと、あの領地は成り立たない」
そこから、滔々と語った。
最初のコメントを投稿しよう!