第一章:結婚 x 結婚

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「そのようだな」  そのくらい、ユージーンだって手紙を読んだ時点で把握している。 「断れるわけないじゃないですか。しかも相手が、よりによってベネノ侯爵令嬢とは……」  ネイサンが熱くなれば熱くなるたびに、ユージーンは冷静になれる。 「彼女を知っているのか?」 「知っているも何も……。彼女は、社交界の毒女として有名ですよ?」  有名と言われても、社交の場からめっきりと遠くなったユージーンにしてみれば、初耳である。  ――断れない縁談。  ――その相手が社交界の毒女。  となれば、この縁談に何かしらの意図を感じる。 「この毒女……ではなく、クラリス嬢ですが。アルバート王太子殿下の腰巾着としても有名でしたからね」  アルバートの名が出たところで、ユージーンは無意識に口の端をひくっと動かした。 「アルバートの腰巾着、だと?」 「ええ、これも有名な話ですよ。社交の場では必ずアルバート王太子殿下の側に張り付いていて、殿下が料理を褒めて口にしようとすると、脇からそれを奪い取るって。まぁ、僕もそんな話は噂だと思っていたんですけどね」
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