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ユージーンも湯浴みを終えたところのようだ。襟足が少し濡れており、水滴がこぼれている。こうやってまじまじと彼の顔を見るのも初めてである。
結婚して二か月。初めて顔を合わせたのが今日なのだから、仕方あるまい。
「どうぞ、こちらに。今、お茶を淹れます。ですが、旦那様のお茶には毒をいれませんから、安心してお飲みください」
アルバートの近衛たちは、クラリスがアルバートにお茶を淹れるたびに、毒を入れるのではないかと心配していた。アルバートのお茶に毒を入れたことなど、一度もないというのに。
クラリスだってわかっている。毒を定期的に摂取しなければならないのはクラリスだけであり、他の人は毒を体内に取り込んだことで、最悪、死に至ることも。
「どうぞ。いたって普通のハーブティーです」
「君のは?」
ユージーンはクラリスのカップの中身が、普通のハーブティーではないことに気づいたようだ。
カップをテーブルの上に置いたクラリスは、彼の向かい側の二人がけのソファの隅にちょこんと座る。
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