325人が本棚に入れています
本棚に追加
デリックが毒師になると決心したとき、父親は少しだけ寂しそうに顔をゆがめたものの、毒師の仕事がいかに素晴らしいかを力説していた。
それでも母親は複雑な心境だったようだ。自分は犠牲にしても、子どもを守りたいと、心のどこかでは思っていたにちがいない。
やはりそれも説き伏せたのは父親である。
子どもたちだっていつまでも子どものままではない。成長と共に人生の目標を持つようになると。子どもたち本人が自分の意思で毒師になる道を選んだのであれば、それを見守るのも親の役目ではないか、と。
危険だからといって危険なものをすべて排除してしまえば、成長する機会すら失ってしまう。だから危険であることがすべて悪いわけではない、と。
「わたくしはこの体質を生かして、アルバート殿下の毒見役を務めておりました。アルバート殿下は狙われることが多く、わたくしとしましては毒に困らない生活を送らせていただきました」
むしろアルバートの毒見役とは、たいへん光栄である。
「アルバート殿下の毒見役は、十年ほど続けさせていただきましたが……」
ところがあの日。アルバートとハリエッタの婚約披露パーティーが行われた二日後。
最初のコメントを投稿しよう!