第四章:辺境伯 x 毒女

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 おもわずクラリスの口から、情けない声が漏れた。だが、すぐにきりっと顔を引き締める。 「ですが、この結婚は離婚前提で受ければよい、離婚約であると、そう提案されたのは旦那様ですよね?」 「ああ、そうだ。だが、気がかわった」  すっと立ち上がったユージーンは、クラリスの隣に座り直した。彼の重みによって、ソファが沈む。 「俺は……この結婚を離婚約にするつもりはない」 「え?」 「俺は君に惚れたんだ。毒蛇を両手に持って俺を出迎えたあの姿。あれは、衝撃的だった。それと同時に、俺の心臓は打ち抜かれた……」 「もしかして、吊り橋効果というものでは? 恐怖を覚えたときに出会った異性に対して、恋愛感情を抱きやすくなると言われているではありませんか」 「たとえそうであったとしても、俺はかまわない。少なくとも、君は今、俺の妻だ」 「ですが、それは紙切れ一枚の薄っぺらい関係です」  ユージーンの鉄紺の瞳は、まっすぐにクラリスを射貫く。 「今は薄っぺらい関係だとしても、俺が君を愛するのに、何か問題はあるのか?」
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