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代わりにネイサンへパーティーへの出席を頼み、適当な贈り物を用意するようにと伝えていた。
「その婚約披露パーティーで、あの毒女……ではなく、クラリス嬢がやらかしたのですよ」
ネイサンは憤っているのか楽しんでいるのかよくわからないような微妙な笑みを浮かべている。
「殿下が婚約者の方とダンスを終えたとき、毒女が婚約者に飲み物をぶちまけたのです」
とうとうネイサンは、毒女をクラリス嬢と言い直すのをやめた。
「よっぽど悔しかったんでしょうね。毒女は、自分がアルバート殿下の婚約者に選ばれると、そう思っていたにちがいありません。なにしろずっとくっつきまわっていましたからね。周囲の者も、そうなるだろうと思っていた節はあったみたいですし」
それでもアルバートの婚約者となったのはジェスト公爵令嬢のハリエッタである。身分的にも釣り合いがとれているし、婚約発表の前から二人の仲睦まじい様子は噂になっていた。そういった話はユージーンの耳にも届いていたのに、毒女ことクラリスの話はまったく知らなかった。
「婚約者のドレスは汚れ、殿下は婚約者を連れて退席なさいました。そのあとの毒女が見物だったんですよ」
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