第四章:辺境伯 x 毒女

14/25
前へ
/250ページ
次へ
 あまりにも動揺して、自分でも何を言っているのかがわからない。  ユージーンは喉の奥で「くくっ」と笑っている。 「ああ、すまない。あまりにも君が初心な反応を見せてくれて、嬉しくなった。やっぱり、抱いてもいいか?」 「だ、だ、だ、ダメです。我慢するとおっしゃったばかりではありませんか!」 「そうだな。今日は我慢する。明日はどうなるかわからないが」 「明日……」 「なんだ? 君は俺の妻だろう? 俺もやっとここに戻ってこられて、愛おしい妻の側にいられるのだから。少しくらい、かまってくれたっていいのではないか?」  そう言ったユージーンは、いきなりクラリスの肩をつかんで抱き寄せ、口づけた。  あまりにもの行動のはやさに、気がついたら目の前に彼の顔があった。クラリスからしてみれば、そんな感じである。  それも唇と唇を合わせるだけの軽いものではない。彼はしつこく重ね合わせたあげく、唇を食んできた。 「んっ……ふっ……ン」  息苦しくなって呼吸を求めようとすれば、鼻から抜けるような甘い声が漏れた。次第に身体からも力が抜け、ずるずるとソファに沈みかける。  いや、押し倒されている。
/250ページ

最初のコメントを投稿しよう!

325人が本棚に入れています
本棚に追加