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その仕草を目にして、ざわっとクラリスの肌は粟立った。
「一生俺の妻でいてもらえるよう、俺も努力しよう。では、おやすみ」
チュっとクラリスの額に唇を落としたユージーンは、内扉を開けて自身の部屋へと戻っていく。
高まった身体の熱をやり過ごしながら、クラリスは寝台へと潜り込んだ。
次の日、目覚めてメイを呼ぶ。昨夜となんらかわりないクラリスの様子をみて、メイは少しだけ顔をしかめたものの、何事もなかったかのように朝の支度を整える。
クラリスは、朝食の前に温室にまで足を向けるのを日課としている。それもあって、普段は紺色のエプロンワンピースを身につけていた。調薬やら毒草の摘み取り、はたまた生き物の毒抜きをするときの作業のときにも着ている。
私室を出てエントランスへと向かうと、そこの長椅子にはユージーンが座って、新聞を読んでいた。昨日の晩餐のときと姿もかわって、白いシャツに黒のスラックスというくだけた服装である。
「おはようございます」
クラリスが声をかけると、ユージーンも新聞から顔をあげて「おはよう」と返す。
「これから温室へ行くのか?」
「はい」
「俺が同行しよう」
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