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立ち上がったユージーンは新聞をたたんで、長椅子の上にパサリと置いた。さらに、メイに向けて目配せをする。
するとメイは一礼して去った。
「では、行こうか」
そう言ったユージーンは、ソファの肘掛けにかけてあった上着を羽織る。
クラリスはうんともすんとも返事をしていない。温室に行くのかを問われ、それに返事をしただけだというのに。
ユージーンが差し出した手に、そっと自身の手を重ねた。
エントランスを出る前に、彼はジョゼフに何か言いつけた。その何かが何であるか、クラリスの耳にも届いていたが、この状況に戸惑っていたため、話の内容は右から左へ通り過ぎていた。
「クラリスは、毎朝、温室まで散歩をしていると聞いた」
正確には散歩ではなく、温室で栽培している草花の成長具合の確認である。朝一で確認することで、草花の摘み頃を把握しておくのだ。
「はい。メイと一緒に温室まで行っております」
「これからは、メイの代わりに俺が同行していいだろうか?」
「え?」
「迷惑か?」
おもわず彼の顔を見上げた。
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