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ユージーンはやさしく微笑んでいる。この顔を見たら「迷惑です」とは言えない。それに、彼も言ったように「メイの代わりに」と思えば、今までとかわりはないだろう。
「いえ、お気遣いいただき、ありがとうございます」
「そ、そうか……迷惑だと言われたら、どうしようかと思った」
くしゃりと表情をくずして、彼は破顔した。また、その顔がクラリスの心を揺さぶる。
温室は庭園をまっすぐに抜けていく必要がある。そこでは、朝も早いうちから、庭師が丹誠こめて花の世話をしていた。
「おはようございます、旦那様、奥様」
「おはようございます」
「おはよう。朝から精が出るな」
ユージーンが声をかけると、庭師は照れたように頭をひょこっと下げた。
太陽が昇ろうとしているこの時間帯は、まだ空気がひんやりとしており、朝露によって葉っぱが濡れている。
庭園を抜けるとすぐに温室が見えた。
温室の中はあたたかい。暑すぎるときは、温室の小窓を開けて温度を調整する必要があるが、今日の気温ではその作業は不要だろう。
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