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「好きではないというよりは、危険な場所だからな。入らないようにと俺たちが厳しく指導している。君が言ったように毒をもつ生物がたくさんいるし、たまに魔獣も紛れ込んでくる。自分の命をおびやかすような場所に、自ら飛び込みたいと思うものはいないだろう」
「そうなのですね。わたくしとしては、毎日、森で毒きのこや毒虫などを採取したいのですが……」
そこまで言いかけて、やめた。これでは同行してくれたカロンを咎めるような言い方になってしまうと想ったのだ。
「なるほど。君が森に入るときに同行していたのは、カロンだな」
「は、はい……」
それもネイサンから聞いたにちがいない。カロンの名前が出て、クラリスの心臓はドキリと大きく跳ねた。もしかしてユージーンは彼を叱責するのだろうか。そうであるなら、カロンに申し訳ない。なんとかして、カロンは悪くないと説得しなければ。
「……よし。これから君が森に入りたいというときは、俺に声をかけなさい。俺が同行するから」
「え? あっ」
「うおっ」
クラリスが驚きユージーンを振り返ったため、手にしていたじょうろがちょうど彼の足元を濡らす。
「あ、申し訳ありません」
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