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ちらっとユージーンを見上げれば、その視線に気づいたのか、彼も顔をこちらに向けてくる。
「どうかしたのか?」
「いえ、どうもしません」
少しだけ速く動いている心臓を落ち着けるかのようにして、クラリスは目の前に見える城館に視線を向けた。
館内に入ると、ふたりとも着替えをするためにそれぞれ部屋へと戻った。
クラリスは裾や胸元にフリルがふんだんにあしらわれたモーニングドレスに着替える。
昨日までは一日中、紺色のエプロンワンピースで過ごしていたというのに。
食堂へ入ると、ユージーンはすでに席に着いていた。先ほどとその服はあまり変わってはいないように見えた。
ネイサンが椅子をひいたため、クラリスは静かに着席する。
朝食のときもクラリスは毒を飲む。夕食時はお酒に見えるようにショットグラスを使用するが、朝食時はお茶に見えるようにティーカップを用いる。それはクラリスの体質を知らない者が見ても、不思議に思わないようにという配慮のためであるが、すぐに気づいたのが目の前のユージーンだった。
「クラリス。君に言っておかねばならないことがあるのだが」
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