第四章:辺境伯 x 毒女

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 ちらっとユージーンを見上げれば、その視線に気づいたのか、彼も顔をこちらに向けてくる。 「どうかしたのか?」 「いえ、どうもしません」  少しだけ速く動いている心臓を落ち着けるかのようにして、クラリスは目の前に見える城館に視線を向けた。  館内に入ると、ふたりとも着替えをするためにそれぞれ部屋へと戻った。  クラリスは裾や胸元にフリルがふんだんにあしらわれたモーニングドレスに着替える。  昨日までは一日中、紺色のエプロンワンピースで過ごしていたというのに。  食堂へ入ると、ユージーンはすでに席に着いていた。先ほどとその服はあまり変わってはいないように見えた。  ネイサンが椅子をひいたため、クラリスは静かに着席する。  朝食のときもクラリスは毒を飲む。夕食時はお酒に見えるようにショットグラスを使用するが、朝食時はお茶に見えるようにティーカップを用いる。それはクラリスの体質を知らない者が見ても、不思議に思わないようにという配慮のためであるが、すぐに気づいたのが目の前のユージーンだった。 「クラリス。君に言っておかねばならないことがあるのだが」
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