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いつもの毒入り紅茶を飲みながら、クラリスはしれっと答えた。メイにとっては驚きの事実であったというのに。
「そうなのですか? てっきりお似合いの二人だと思っていたのですが」
「アルバート殿下はハリエッタ様を想っていらしたから、他の女性が寄りつかないようにというけん制もしていたけれども。わたくしとアルバート殿下は、お互いにそういった感情はいっさいないわ」
「そうだったのですね」
クラリスのすがすがしいほどの笑顔に、二人の関係を勘違いしていたメイは恥ずかしくなった。
「まあ、わたくしも周囲にそう思わせて、わたくし自身の結婚の話題を遠ざけようという意思があったことは認めます」
「クラリス様はご結婚なさるつもりはなかったのですか?」
メイにとってクラリスに結婚の意思がなかったという話は寝耳に水であった。
「ええ、そうね。あなたもわたくしの体質は知っているでしょう?」
「そうでうけれど。それと結婚、関係ありますか?」
「世の中、メイのような人間ばかりではないってことよ」
そんな意味深な言葉を口にしたクラリスであるが、今はすでに結婚している。しかも新婚ほやほやで、夫は不在という別居婚である。
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