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さらにその結婚は離婚前提の約束であったため、受け入れたとのこと。
離婚前提の結婚でかつ別居婚という、新婚とはいえないような環境であっても、クラリスは不平不満を口にしない。
メイとしてはクラリスの幸せを望みたいだけだから、クラリスにとって満ち足りた生活を送れているのならば、メイ自身も不満はない。
「私は誠心誠意、クラリス様にお仕えするだけです」
「ありがとう。あなたがここに来てくれたから、本当に心強いわ」
そう言ってもらえれば、メイだってまんざらでもない。ちょっとだけ、心がふわっと浮いた。それを誤魔化すために、話題を振る。
「それにしても、旦那様はどのような方なのでしょうね?」
せっかく輿入れしてきたというのに肝心の夫が不在。
「わたくしも姿絵しか拝見していなけれども、やさしそうな雰囲気は受け取ったわ。それに、こちらで働いている使用人を見れば、なんとなくその主人の人となりもわかるでしょう?」
「そうですね。アニーさんもとても親切に仕事を教えてくださって。私までよくしてもらってます」
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