プロローグ

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「そうではない。君には感謝をしているよ。だからこそ、君にも幸せになってもらいたいと、私もハリエッタもそう思っている」  そんなのは言いようだ。邪魔だから結婚しろと言うよりは、幸せになってもらいたいから結婚しろと言ったほうが、周囲に与える印象はよい。  だけど、結婚の先に幸せがあるかどうかは、人によって異なる。少なくともクラリスは幸せだとは思っていない。  むしろ結婚なんてしたくない。よりによって辺境。そこへ嫁いでしまったら、もう二度とアルバートの側に戻ってくることなどできないだろう。王都に足を運べるかどうかもわからない。  もしかして、クラリスを辺境に追いやろうとしているのだろうか。邪魔になったから、捨てようとしているのだろうか。  クラリスの目の前が真っ暗になった。 「クラリス様!」  ハリエッタの驚いた声が、頭の中に響いている。
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