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「と、言う訳で。尊殿は要様に神格を奪われ。宮司は、人間側の法律違反で逮捕。東分社は解体するそうです。次が就任されるまでは、中央から社を持たない神を派遣されるみたいです」 「興味無いです。燈夜サマが十五夜を越えられた事実に満足なので」 「土壇場で朔来が。荒魂と和魂を反転させた御陰です。その点に関しては感謝していますけれど。その動機は、どうかと思います」 「燈夜サマが完治するまで待ったんですよ?」  高い建物が続く、都心部繁華街。  霜冴ゆる空は無風で穏やかな寒凪日和。微かに地下鉄振動を感じる舗装路を社会人達は疎に往き交う。準備中札が掛かる通りの飲食店も数分後には混雑を極める筈だ。点滅を繰返す横断歩道は足早に渡りきる。その眼前では記憶通りの場所に聳え立つ、様々な業種が混ざる高層ビル。途端に草臥れた靴先が動きを止めて、薄紅色の唇は絶えず白い吐息を溢す。  心臓の脈拍が早まる感覚と、高まる緊張。隣を歩く燈夜に。この気持ちを伝達しようとして、躊躇う。知識は仕入れたが、経験深い自負が弱気を許せず素直の邪魔などする。  ネオン仕掛けの神様が棲む通りは、踏込んだ瞬間に雰囲気を豹変させた。非現実を映す、妖艶な風貌の外装展開に富んだ建物達が点在する。休憩処と書かれた時間や日付で区切られた料金表。仲睦まじげなカップルや、金銭関係強めの男女。立入る機会がゼロに等しい場所は、朔来の緊張を煽り硬直させる。色艶めいた街が手招き、弄ぶ秘事の甘美さを味合わせ中毒に溺れさす。そんな際疾い綱渡りを愉しむ光景が圧倒する。経験無い場所に怯懦する本能を宥めた朔来が、揶揄われる覚悟で掴む燈夜の防寒具。真横から伸びる掌が優しく髪を掻混ぜて飽和する。安堵を抱かす彼が踏込む適当な店舗。覚束無い素振りで至る挙動を見守るパネル操作。その待機時間さえ周囲の好奇的視線に晒されるようで逸る羞恥。華奢な背中に顔を埋めれば、名前も知らない花香水が鼻腔支配した。機械が吐出すカードを目張りの施された受付に手渡す。要領良く交換受ける番号付属の鍵に燈夜は興味津々だ。部屋の施錠を解いた彼が扉開き、朔来へ促す入室。同時に背後で響く閂掛ける音は肩を竦ます。挙動不審な姿に堪切れず声を溢して笑う燈夜。睨む朔来は駄々子みたく彼の胸板を抗議の意など込めて叩いた。それさえ意に介す様子無い姿勢こそ不服だが。戯れが許容される距離感は愛おしい。 「朔来は可愛いです。セックスしたい欲望は簡単に声へ出す癖に、初心な反応で。僕で童貞が卒業出来るのだから、感謝して欲しいです」 「眼を閉じて、通り過ぎる場所です。だから刺激強めな区域に耐性が無い訳で、心の準備が出来るまで待ってください。出来れば五年位」 「馬鹿なこと言わないでください。随分と破廉恥な妄想は元気だったでしょう。妄想が現実になるだけで。何を躊躇う必要があるのです」  今更、羞恥心を晒す必要が何処にあるのか。呆れた様子で説得する燈夜に朔来は言澱む。居直るだけの強さがあれば。卑猥晒す場面を印象強く記憶に残す妄想など彼へ詰問したい。内面が酷似する奏和と情事に及べば、身代わりと認識出来るやら。歪んだ愛し方に堕ちて悩まず楽になれるとか。振返る浅薄過ぎた期待に罪悪感や慚愧が覆被さる。顔を隠す役割であるクッションが燈夜に取上げられてゆく。反射で放置された枕を掴もうと画策する腕が囚われる。逃場喪失する朔来は、潤む視界かつ真紅染めた顔で意地悪い彼を見上げ睨む。仄か朱染めた頬で狡いと呟いた燈夜が頭を抱える。次いで揶揄い過ぎた謝罪を為す彼がぶつける額同士。至近距離が、瞳にある虹彩同士を、掻混ぜそうな錯覚に陥らす。朔来の感情脆さは燈夜に信頼を置き、心が許せた故の弊害だろう。自覚する弱さが棘みたく這寄り指先に絡み首筋を絞上げる。重ねて認知した羞恥や照れの理由。それを恥など忍び吐露する努力は視線逸らしても評価されるか。 「散々、僕のスマホで情事の致し方を調べていたでしょう?検索履歴を消し忘れる位、頑張ったのですから。自信を持ってください」 「そこで励まされても嬉しくないです」  辿る平行線上で会話は踊る。言葉での説得が出来なければ、物理解決に頼る策略しか無いと朔来は思う。別段、及ぶ行為に抵抗や拒否意識がある訳ではない。気分の問題とか消極的な意欲など、精神面にも理由は抱かずいる。単純に身体を晒す不安や緊張とか。燈夜を信頼する気概。漸く認めた恋情では、それらの天秤が水平にならないだけだ。加えて不慣れな場所で情事に挑む抵抗が邪魔をする。相反して内殻で膨らむ燈夜の欲深い獣部分を暴きたい希求。快楽に酔わなければ、彼へ素直な好きを伝達出来ない意地。複雑な胸懐を鬩がせて葛藤する宵から、合意が得られないと判断したか。距離置き防寒具を脱ぐ燈夜が魅せる背中は油断など滲む。  刹那、朔来が主導権掌握へ至れば。要領良い心情解決が出来る事実に気付いた。持込む握力勝負こそ、燈夜に敵わないが。奇襲戦法を選べば、朔来が有利なのは経験済みである。振返る胸倉に指先を絡ます。ゼロ秒数以下も無駄にせず、寝台まで連込んだ燈夜を全体重懸けて押倒した。確信する勝利を孕む香染めた虹彩に、洒落た壁紙や照明などが映る。こちらを見下ろす燈夜の得意気な表情と打付けた背中が呼吸まで奪う。抗えぬ重力に彼の耳縁から溢れる黒檀髪。獲物を捕食する直前の猟奇的な獣瞳。弧を描く妖艶に歪んだ唇。呆気に取られる朔来の脳が状況把握を鈍らせる。頭上で片手拘束を受けた両腕が無意識に踠く。抵抗する度に敷布と擦れる感触や音で昂る神経が刺激される。触合う手首越しに重なる不整脈を打つ血管は、どちらの余裕無さが顕在化したのだろう。 「残念ですが。主導権は渡しません」 「ぐっ......まだ、待」 「嫌です。お触り禁止は、まだ解除していないです。だから精々、僕の愛情を受容れ。触れない悔しさに苦悩してください」  慣れた手つきで外される衣服釦。硝子細工を扱うような、繊細な挙動。露顕する朔来の浮出た鎖骨や肩に辿々しく突刺さる犬歯。中途半端過ぎる所作は陶器を叩割る痛みなど神経に響かす。働く防衛本能が溢す絶叫を呑む、潰れた呻き声は喉から迸る。遅効性ある媚薬が血液を沸騰させながら緩く快楽与える感覚。困惑する脳を確実に仕留める意図か。咬痕を慰む生暖かい舌触りが喉仏まで艶舞う。燈夜が執念深く甘噛み戯れる首筋は熱帯び欲望を煽る。手練は未熟な癖に多福感満ちる愛おしげな表情を魅せる燈夜。神様は執着深く、独占欲が強い。その言葉が身を持って、実感させられる。残念だが稚拙な独占欲に満たされる程の純粋さは捨てた。手首を拘束する指先は愛撫に夢中で外すなど容易で。伸ばす指先で燈夜の首筋を擽る。受容れ、擁する愛に驚愕する彼の耳朶で燈夜は囁きを捧ぐ。 「朔来。キスマークが欲しいです。出来れば首筋を噛んだ後で、強く吸上げながら鬱血させてください。簡単に痕が付かなければ、繰返して構いません。証は皮膚の薄い部分が残り易い、そうです」 「構わないのですか?」  解けた警戒心の先。仮面を剥がれた甘えなど孕んだ燈夜が朔来に身体を傾けた。普段より数度分だけ高体温な掌で両頬を包む。肌を滑らせる唇から剥出した牙で、首筋を突刺す。継続する鈍痛が神経を蝕む程、彼が所有物に近付く錯覚。固めた決別に未練残す寂寥と新たな呼吸方法を掴めた歓喜。渦巻く感情ごと飽和するように、朔来は燈夜の首筋を吸上げる。慎重に皮膚を噛む前歯やら、不慣れに舌が擽る感覚。断続的に繰返すリップ音が鼓膜を穢す。やがて熱篭る溜息を溢した彼の離れる気配が伝う。初めて飾れた鬱血痕を向日葵色に瞳が満足気に映す。高揚する頬に輝きを滲ます燈夜が、大切な宝物でも扱う素振りで。自身の首筋に伸ばした指先。微かな震えを孕むそれが、几帳面に嬲られた箇所へ触れて甘く痺れさせる。  愛を確認し合う前戯にも満たない。独占欲だけを誇張する愚かな行為に稼働して消費された時計針。繋がるまでの途方無い時間に陥る虚脱感は身体を弛緩する。愛欲に溺れた様子の燈夜へ捧ぐ恋情だけ残れば構わない。酷使した脳は思考放棄を望む。再度引寄せた黒壇髪を乱雑に掻混ぜた。動かす唇で形成する言語は掠れた声帯が邪魔をして、彼には届かず失墜する。要求された繰返しに躊躇いながら、囁く好きの二文字。それが刺激へ昇華した途端に燈夜を貫通させ駆けゆく。性欲を昂らす充分な要素と成得た。双方が溢す吐息達は静寂降りる部屋で絡む。身動げば髪が敷布と擦れる微音は、喧しく鼓膜を震わす。燈夜の頸付近に引掛けた爪先が、胸中で渦巻き滾る我儘や独占欲など主張する。途端に繰返される浅いキス。接触だけの相惚れ並に、達悪い行為は無いと思う。緩過ぎる愛撫で物足りなさを与えて強請らせる目的だとか。不意打ちの激しい責めで甲高い嬌声など叫ばせる油断誘う意図。燈夜の場合は大雑把な手順しか知らない可能性が、濃厚ではあるが。上唇へ柔噛みする感触が宵を翻弄する。深く繋がる愛情深さを渇望する本能が焦れた。燈夜の両肩を掴んだ朔来が、間抜けに薄開く口許へ割込む舌。先程の事故で噛んだ患部を慰るように弄ぶ舌体上。キスの角度が急変化するまで五秒。侵攻する朔来が押戻され、口腔内を支配する圧迫感。丁寧に歯列を割嬲る喉奥や蹂躙する挙動が貪る体温。内頬から上顎を刺激する擽たさと孕む繊細な快楽。唾液同士が絡む厭らしい水音は絶えず。鼓膜を震わせ、伝播する脳まで溶かす。時折、跳上がる肩に踵を暴れさせて甘痺は逃した。至近距離で溺れる向日葵色の瞳が理性まで呑もうと画策する。淫らな銀糸を残して離れた数拍後。歓喜混じりの荒い呼吸を互いに繰返す。燈夜を堪能する姿勢は、行儀良い食事みたいで虚脱感に陥る。一方で朔来は濡れた燈夜の唇を名残惜しげに見つめた。場数も踏まない癖に飲込み良く積極的な朔来は理性を怯懦させる。逃腰で逸らす後頭部を彼が穏和に抱く。 「やっ......は、はぁ、ふ」 「は、あ......やっぱり燈夜サマが好きです」  心底想う声音が燈夜を抱擁する。愛されたい願望を知る故の弊害か。存分な恋を傾注する朔来の姿勢に、燈夜は物憂や羞恥など孕む。あんな風に直接的な愛情表現が出来れば彼も安堵するだろう。両想い相手が告げる好き程、歓喜めく感情を得られる機会は無いので朔来も捧げたいが。虚脱感に陥る身体では言葉を発する動作さえ億劫だ。肩で呼吸を繰返す燈夜にそんな気力は残らない。朔来の伸ばす指先が長い前髪を捕える。加えて緩く頬を撫でた彼が露顕させる左目。そちらに意識を奪われた途端。肌蹴た衣服の隙間へ凍えた掌が侵入する。骨格を辿る感覚に神経が総毛立ち痺れ酔う。燈夜の深層まで暴こうと画策する動作に、身体奧で固まる得体知れぬ存在が弾けた。好き勝手、素肌を這う癖に肝心な箇所は避ける。焦れた接触に狂い溢れる嬌声を燈夜が奥歯で噛む。遠回りで執拗かつ未熟だが確実に捉える愛撫。嬲るように爛れた雰囲気が時間を掛けて滲む。身体中の性感帯が高まる錯覚に、尖る胸先は主張を始める。未知の領域に惹込まれた鋭感が主導権奪取の難易度を上昇させた。朔来は愛おしげに噛痕や独占欲の証を撫でる。身体を弄る手首に無意識が動かす指先は制止する意図で絡む。淡い抵抗は瞳を見開かす充分な要素と成得た。燈夜の水晶体に朔来はどう映込んでいるか。相手を煽るには充分な副作用である事実だけ理解出来た。本心でない軟弱過ぎる拒否に充てられて微笑む彼は、酷く妖艶な可憐さを帯びる。肌質を堪能する爪先が引掛ける胸の尖り。脊髄から脳を伝播した痺れが瞬間的に快楽へ昇華させる刹那。燈夜の企んでいるだろう様々な熟考や思惑が白で塗潰してゆく。やがて欲望が埋尽くす脳は忠実に燈夜へ縋れた。 「ん、ふ......やっ」 「可愛い。折角、奪取した主導権も形がありませんね。燈夜サマ敏感だから、少し責めたら理性を保って居られなそうだ」 「煩い......ね、朔来、もっ......触って?」 「......燈夜サマには、生涯敵わない気がします」  本当に狡い。呟いた朔来の爪甲が。燈夜の肋骨浮いた皮膚を傷付ける。悪戯に掻かれた胸頂点から下腹部へ疼く蟠りが彼を翻弄した。指腹で摘んだ尖りは、容赦無く擦潰す。僅かな粗雑さを帯びて弾かれる突起。喉奥から溢れる嬌声。情事に沈み蕩ける瞳が濡れた。身体内で疼く快感を吐出す手段を探るように。身動ぐ燈夜の姿に享受する感覚が脳を支配してゆく。脊髄を辿る電撃に似た快楽が背中を仰反らす。漸く得られた直接的な刺激に、下着を押上げる自身が窮屈だと訴える。嚥下出来ない唾液が唇端を溢れた。愛おしい。荒らげた呼吸を雑音混じりに漏らす言葉は、燈夜の鼓膜まで届いた様子で。真剣過ぎた表情で愛撫続ける彼が息呑む。放置を受続ける、もう片方も強請れば堪能されるか。期待でもしているのか。熱浮いた意識が朔来の名前を繰返し呼ぶ。優しく髪を掻上げた朔来が魅せる傾聴姿勢。密着する太腿付近に硬く重たい膨らみが当たる。痴態を晒す燈夜に朔来が興奮している確実。嘘偽り無く抱かれる好意の証明に、込上げる歓喜と緩む口許。脆弱な握力で彼の衣服を掴み、施した触れるだけなキス後に訴える希求。例え朔来が燈夜の欲望を察しても、意地悪で無視される可能性に不安気だった。出来る限り愛嬌を振撒き、直接伝達した方が効果覿面だと学習済みか。否、応えられる確率が高まるだけで、気分次第の却下も場合に数えられるが。 「朔来、胸......両方、欲しい、っ!」 「素直に強請る燈夜サマ可愛い」 「んあっ......あ、あぅ......ん」 「好きになれてよかった」  狙う獲物を捕らえた、香染めた獣瞳が細まる。舌舐めずる朔来に覚えた雄邁が、燈夜の心臓を強く拍動させた。肋骨付近に散る綺麗な髪を視認した直後。快楽だけで熟す紅実を湿気帯びた唇が包む。焦れた吸寄せや戯れるような柔噛み。既に寵愛を受けた片方も朔来の指先が隙無く捏回して擦る。両胸を襲う違えた甘い痺れが責立て、感度上昇など図りゆく。緩火で内臓を炙る熱さと、欲望が理性を呑む感覚に喘いだ。指先を白染めする程に強く掴む敷布。それでも快楽を逃がせず、瞳縁は生理的な涙が満たす。決定的な刺激を得れば下腹部で疼く蟠りも解消出来るか。嬲る胸粒を朔来が強めに噛んだ瞬間。濡れた感触が苛む下着を粘気ある液体が汚す。軽く強張る身体を徐々に弛緩させてゆく。その挙動に察した様子の朔来が表情を輝かす。耳朶に歯型を刻む彼が燈夜へ意地悪く問うた。 「可愛い、胸だけで絶頂出来るんだ?」 「んぅ......っぁ......きもち、い」 「溺愛したくなる気持ちが理解出来るな」 「は......んっ、朔来、こっちも愛して」  欲望に忠実な燈夜の脳が溺れる快楽の顔。内側を炙る熱が自我まで呑込む錯覚。不明瞭過ぎる憂いが気怠い身体を酷使して朔来の手首へ縋る。掴んだそれを緩火が疼く下腹部まで誘導した。躊躇いも振払う卑俗さに朔来が喉を鳴らす。髪に指を押込む彼が重ねた唇。受けた燈夜が即座に強請る濃厚なキス。酔いどれ夢中な、燈夜の脚間に割込む片膝が中心を絶妙過ぎる加減で押す。細胞粟立つ感覚に瞠目する虹彩縁で、溜めた涙が意図せず溢れた。懲りずに膨張始めた自身が執念深く刺激を受ける。衣服越しに擦れる感触が焦れたい。朔来の胸板を叩いた燈夜は、掠れた声帯で直接触れてと要求する。艶舞う我儘に絡ます色香深さが朔来を誘う。達悪い無意識など晒す燈夜を見下ろす彼が苛んだ表情に変貌する数拍後。革帯が解かれる金属音は鼓膜から内殻を犯す。太腿と衣服布が擦れる感触に過剰反応する。無様に晒す後孔が震えた訳は期待と外気のどちらか。既に幾つも粘液が絡む箇所を穢す新たな先走り。それを塗潰す動作で朔来が竿包む掌は卑猥鳴りなど響かせる。ふと位置逸れた親指腹が鈴口を抉り苛めた。瞬間、背筋から駆ける衝撃は呼吸を奪う。際限無く滲む透明な液体を堰止め詰る責め。朔来が手練で燈夜を追立てる都度に。彼の掌は吐出す欲で穢れる。そんな光景が酷く扇動的に思えた。蓄積を続けた熱蟠りが陰茎へ流れて刺激的に脈打たせる。迫る限界に朔来が扱く行為を制止する前に。緩急付いた素早い責めが絶頂まで誘う。 「やっ......あ、イクッ!」 「気持ち良過ぎて堪らない顔を晒してる」 「ふ、はっ......さく、欲しい、も......いれて」 「......愛しいな。手離せなくなりそう」  もう手離す気もない程に溺愛している癖に。欲望吐いた直後に襲う全身の気怠さ。高揚する薄紅肌と蕩けた瞳で訴える続き。快楽の残滓が蝕む神経は未だに、脳内麻薬を分泌させ続けた。慈愛満ちる微笑みを浮かべた朔来が掻混ぜる黒檀髪。その腕を掴む燈夜は頬擦り潤んだ上目遣いで甘えて魅せる。途端に朔来の香染めた瞳は輝き、多福感満ちた表情が輝く。壊れた電子機器の如く好きや愛しいだけ伝播する。そんな語彙力喪失する彼が傍に設置された籠へ腕を伸ばす。掴んだボトルが、逆様にされる光景を映す虹彩の先。白濁汚れた掌と粘気強い中身が卑猥に混在してゆく過程は燈夜の胸を高鳴らす。体温で暖められた滑りが臀部を丁寧に割目探り、気遣いながら弄る後孔。縁取るように蕾を撫でた指腹が軽く叩き揉込み解す。浅い箇所を時折、爪先が引掻く緩い刺激が襲う。焦れた歯痒さが足指を悶えさせた。徐々に撓む蕾が期待込めて朔来を誘う。唆られると呟いた彼が燈夜の希望通りに中指を押込む刹那。機能違えた行為に息苦しさが迫上げる。思わず縋り掴んだ燈夜の腕肌に爪が血液を滲ます。熱帯びた呼吸を連れて彼が溢す微かな呻き。慌てた燈夜は咄嗟に手繰寄せた患部を舐めて慰る。口内を支配する鉄味の濃さに比例して。不慣れを謝罪する燈夜の表情が傷心めき沈鬱に澱む。些細な選択間違いが嫌悪や離別の引金を弾く。関係脆さを互いに理解出来ている。故に余裕無く必死で居る自分達に気付いた朔来は頭を振り応えた。深呼吸を繰返す後で促す続き。押込まれる指先が粘膜を掻き奥へ進む。その過程で内部を探る末節が擽り掻く感触。神経から脳に不随意反応の支配を受けた。 「ん......う、ぐっ、指、増やして」 「燈夜サマが、無理する姿なんか見たくない」 「やだぁ......朔来と、繋がりたい」 「......本気で駄目だと感じたら教えろよ」  言聞かせる朔来に頷返す。向日葵色の瞳を滴る雫が舌先で掬われた。引抜く感触の後で増えた指が縦横無尽に内壁を抉る。乱離する爪甲に特定箇所を抉られた瞬間。不明瞭な景色を映す、視界が白点滅だけ繰返す。同時に喉気管の狭まる感覚が息苦しい。動揺で捩る身体を朔来が容易に制圧する。燈夜に覆被さる姿勢で抑え付けた朔来が、最も感度高い部分を執念深く穿つ。強過ぎる刺激に腰が無意識下で揺らぐ。熱帯びた自身が幾度めかの絶頂まで駆始める。甲高い嬌声を晒して喘ぎ啼喚く、燈夜に朔来が歪ます口許。快楽を逃そうと無意識が踠く最中で、太腿を走る鋭痛。残る噛痕に朔来の独占欲強さを再確認させられる。瞳同士が絡んだ途端に満足は彼の表情を浸す。濡れそばつ箇所を解す指が逸走する。絶頂待ちで反返る燈夜自身と新たな圧迫感を期待して攣縮する後孔。燈夜が晒す痴態に興奮や昂りを得たか。衣服を寛げた朔来が取出す主張激しい熱塊。血管を怒張させ脈打つ猛々しく聳える逸物に息呑む。朔来が持つ度量衡など意識せずいたが。秀逸な凶器が、期待で胸を高鳴らせる。急いた気持ちが朔来の服袖を引かす。喰らう御預けに堪切れず強請る燈夜。その行為が彼を獣へと容赦無く変貌させる。 「朔来......ひぐっ、はやく、欲しいっ」 「......っ、燈夜サマさ、ほんとタチ悪い」  高揚で薄紅滲む頬を朔来が撫でる。心底愛おしげに微笑む姿が燈夜の幸福感を滾らせた。絡む衣服を面倒気に、彼が肌蹴さす透目。綺麗に割れた腹直筋を燈夜は垣間見る。強請る燈夜の後孔に彼が充てがう自身。緩い深呼吸を繰返す隙に襲う圧迫感や逸物の重量。甘い刺激だけの指先とは違う。的確に内壁を抉る快感が図る心拍数上昇。同時に混沌へ突落された意識が、好きと気持ち良いしか考え巡らなくなる。待侘びた奥まで熱塊が燈夜を穿つ。本能で引ける腰は朔来が鷲掴み逃がさない。喉を溢れる短調な悲鳴も、染出す快楽が嬌声に変貌させる。漸く繋がれた。体内で埋まる朔来を腹越しに燈夜の指先が撫でる。自然と口許が綻び浮かぶ、微睡んだ笑顔と。挿入後に孕んだ微かな痛み。時間掛けて蝕む悦楽が朔来に身体を構築され直す錯覚など起こす。 「んあぁっ、や......きたぁ......ね、うごいて」 「ぐっ、あ......締付け過ぎっ」 「うぐ......はぁ、朔来、の、モノに、なっちゃった」 「こんの、無自覚がっ!」  多福感に溺れた燈夜が溢す恍惚。意図せず放つ威力強い言葉。触れた朔来が理性の糸を切らす。体内に埋まる熱塊が緩い動作で抜ける感覚の直後。息継ぎも許さず押戻される衝撃に眩む。腹内を抉る悦楽と最奥突く律動。朔来に破壊されたい欲求が燈夜の胸中で増す都度。結合部から漏れる淫音と無様な啼声が激しさを物語る。強く噛んだ唇の隙間を嚥下出来ない唾液が頬に伝う。皺寄る程に敷布を握れば惰性で切損ねた爪が割れる。直接的な刺激を期待して震える燈夜自身が朔来の掌に包まれた。同時に内壁抉る逸物が循環する血液を沸騰させるように湧立たす。体内で受ける急速な絶頂を誘う動作が勢良く吐出さす白濁。燈夜自身で腹を汚す数拍遅れ。朔来が熱い飛沫を宵に注込む。 「や、イクっ......ひぐっ、う」 「ぐっ、は......はぁ......っ」  欲望解いた逸物が抜ける感覚。生暖かい白濁が後孔を溢れて太腿まで伝う。恋慕相手の捧げた愛情を掻出す行為は名残惜しいが。嵩む厄介や面倒を思えば、事後処理が必要となる。容赦無く押寄せた疲労と倦怠感に意識が混濁する。僅か汗ばむ前髪を撫でる朔来の指先が酷く心地良い。眠気に抱擁された燈夜は無抵抗で重い目蓋を閉ざした。  
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